戦いを目の当たりにした時のレポート(2)

 拓が何かを言いかけようとした時、さきほどまで何もいなかったはずの空間に影が入り込み、思わず二度見をした。それは音もなく静かに倉庫内に侵入し、棒立ちの状態で停止している。


 人型のオートマタだ。ところどころいびつに見えるのは、複数の機種やパーツを繋ぎ合わせてこしらえた、典型的な違法機体だからだ。ひとつ違うのは、機体の双眸が深緑色に輝いていることだった。


「わざわざ正面から入ってくるなんて、律儀だな」

 伊野田は険悪な笑みを浮かべたまま言葉を漏らした。既にナイフを構えている。侵入してきた機体は足を滑らせるように前後させ、彼の方へ歩み寄った。顔面のパーツが不足しているらしく、頬と額が欠けて中身が露出していた。ところどころ剥き出しになっている骨格部分は、錆びついているのか褐色に変色している。その機体は、見た目にそぐわぬクリアな声で返事をした。過去にナレーションでもしたことがあるのかという話し方だった。


「入口があるのに、わざわざ破壊して入ってくるなんて非効率的だし、騒ぎが大きくなるのは面倒だろう?」

「それには同意できる。でも逃げた他の機体はどうした?」

「ああ…、この機体がね。転送してきたのはいいけど、センサーがイカれててさ。他の機体からちょっと拝借させてもらったんだ。あとはきみのパーツがあればいいんだけど。パーツというより、きみ自体かな。あれ?」


 いびつな機体はそう言い終えると、室内の隅に居る二人に気が付いた。そして驚いたような声を上げる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る