戦いを目の当たりにした時のレポート(1)
「違法オートマタが戻ってきたな」椅子を引きずりながら男がぼやいた。
「だからさっき、全部片づけようって言ったのに」戦闘服の男が愚痴をこぼす。
「通りかかりの警備に発見されるわけにはいかなかっただろう」
「こういう二度手間が嫌だって言ってるんだ」
「きみに、先の時間内に全て片付けられる程の腕があれば良かっただけの話だ」
「…つくづく腹立つな」
男二人が言い合っている間に、椅子ごと引きずられていた拓は室内の隅まで連れてこられていた。相変わらず自分のことは無視されているが。
「気を付けたまえ、先程の争いで、ヤツに我々の居場所が知れたかもしれん。そうなれば転送してくるぞ」
「わかってる」
「転送? なにを言ってるんだ、さっきから」ようやく拓が言葉を発すると、スーツの男はようやく彼の方を一瞥し、こう告げた。
「喜びたまえ。おそらくだが君が追っていた”最初の違法オートマタ”の痕跡が、姿を見せるかもしれんぞ」
「え?」
拓が目を
ほぼ真四角な室内全体を見渡せる光景は、まるでリングのコーナーから選手を見守るセコンドのようで、拓はどうしてか唾をのんだ。その中央では戦闘服の男が腰に巻いていた戦闘服を羽織り、何かを確認するようにゆっくり左右にうろついている。まるで草むらから飛び出してくる獲物を待ち潜む肉食獣のようだった。
拓の真横にいるスーツの男は、懐から拳銃を取り出し、呟くように告げた。
「彼は伊野田と呼ばれている男だ。君の推測通り、いわゆる先読みができる。アタッカーの中でも逸材といえよう」
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