ヤケクソになった時のレポート(2)

 拓は半ばやけくそに話を切り上げ、ぴっと目を瞑った。だが椅子を蹴られるとか胸倉を捕まれるとか、一発お見舞いされるとか、そういったことは起きず、恐る恐る片目を開けた。


 そこに映ったのは、どこか血の気の退いたような顔をした戦闘服の男だった。拓の視線に気が付いたのか、気まずそうな顔で隣の男に視線を送った。しかし、すぐに瞳の奥に鋭さを宿した男は、左右を見渡しつつ右手を腰に這わせた。


 隣のスーツの男は顎をさすりながら頷きつつ「ふむ。当事者しか知り得ないことだな」と呟き、戦闘服の男が纏った緊張感を察して自分の端末で何かを確認した。なんの返答もないことを気がかりに思った拓は、少々動揺しながらも口を開いた。


「あんたらが話す番だぞ…? あんたバーでオートマタの動きを先に予測してたよな? どういうことだ」

 すると男は口元をすっと吊り上げ、皮肉気に告げる。


「話は一仕事終わってからになりそうだし、その行動予測…つまり先読みなら、もうしてる。」そう言い放って、スーツの男に合図をした。


 拓が目を泳がせているうちにスーツの男がこちらに接近し、椅子の背もたれを片手で掴んでそのまま引きずり歩いた。椅子は倒れることなく2本の後ろ脚でバランスを保っているが、コンクリートの床に木材が擦れる音が不快だった。「おいおいおい、なんだよ」と声を上げるも、行動についての返答はなかった。



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