ヤケクソになった時のレポート(2)
拓は半ばやけくそに話を切り上げ、ぴっと目を瞑った。だが椅子を蹴られるとか胸倉を捕まれるとか、一発お見舞いされるとか、そういったことは起きず、恐る恐る片目を開けた。
そこに映ったのは、どこか血の気の退いたような顔をした戦闘服の男だった。拓の視線に気が付いたのか、気まずそうな顔で隣の男に視線を送った。しかし、すぐに瞳の奥に鋭さを宿した男は、左右を見渡しつつ右手を腰に這わせた。
隣のスーツの男は顎をさすりながら頷きつつ「ふむ。当事者しか知り得ないことだな」と呟き、戦闘服の男が纏った緊張感を察して自分の端末で何かを確認した。なんの返答もないことを気がかりに思った拓は、少々動揺しながらも口を開いた。
「あんたらが話す番だぞ…? あんたバーでオートマタの動きを先に予測してたよな? どういうことだ」
すると男は口元をすっと吊り上げ、皮肉気に告げる。
「話は一仕事終わってからになりそうだし、その行動予測…つまり先読みなら、もうしてる。」そう言い放って、スーツの男に合図をした。
拓が目を泳がせているうちにスーツの男がこちらに接近し、椅子の背もたれを片手で掴んでそのまま引きずり歩いた。椅子は倒れることなく2本の後ろ脚でバランスを保っているが、コンクリートの床に木材が擦れる音が不快だった。「おいおいおい、なんだよ」と声を上げるも、行動についての返答はなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます