捕まった時のレポート(4)

 スーツの男の的確な指摘に、拓はお手上げ状態で両眉を吊り上げ半眼になった。こちらも相手も、背景に正当性があるように見えるが、奥に渦巻く怪しさに気が付きつつある。


 拓が不思議に思ったのは相手側も笠原工業に対して敏感なところだ。違法機体を相手にしている機関だとしても、ひとつの会社をこれほどマークするのもめずらしいと感じた。笠原工業の内情に幾分か関係している者であるならば別だが。


 ここで自分の素性を明かせば袋叩きにされかねないが、明かすことで利用できるかもしれない。それに、今は拘束されているが負傷はしていない。むやみに手荒な手段は執らないということなのではないか。傷つけることが目的ではない。こちらが誰で、笠原について何を知っているかが問題なのだ。


 そう結論づけた拓はイチかバチか賭けてみることにした。鼻から息を漏らす。瞬発的に呼吸をして、きっぱり告げる。

「ああ、そうだ、関係者だよ。ラボにいた。あの端末もそこで改造したものだ」


 戦闘服の男は組んでいた腕を解き、すっと目を細める。男と目配せをして口早に告げた。小声のつもりらしいが、拓の耳にもしっかり聞こえた。

「始末しよう。足跡はなるべく早く消したい」

「落ち着きたまえ、情報が必要だ」

「とりあえず、殴らないでくれたことには感謝しておこうか」

少しだけ安堵した拓をよそに、戦闘服の男はより厳しい目つきで拓を睨んだ。今にもナイフを引っこ抜きそうな顔だ。


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