捕まった時のレポート(3)

 相手があっさり素性を明かしたことに拓は驚いたが、当然信じはしなかった。

「嘘つけ。俺の知ってる事務局員にこんなマフィアみたいなやつはいないぞ。…待てよ今日ニュースになってた荒地のオートマタ破壊、あんたらの仕業だろ? 事務局のモンならあんな破壊の仕方はしないはずだ。原則、違法機体に遭遇したら安全確保ってのが根底にあるはずだからな。もしかしてこの廃倉庫が現場か? 警備はどうした」


 拓は倉庫内を見回す。もともと古い建物なのか、ずいぶん前からあったであろうオイルの染みや、砕けたコンクリート片の散乱が目立ち、すべてが戦闘の痕跡ではないかと疑ってしまう。スーツの男は顔色を変えずに続けた。


「事務局の通常業務と少し離れた動きをしていることは認めよう。ここを調べていた警備には、事務局の調査が入ると言って、退いてもらったよ。心配ない」

 男は、場所については言及せずにIDを取り出し拓に提示して見せた。ホログラム上のそれが、目前に浮かび上がる。拓はそれを隅から隅まで眺めた。数十秒かけても確認させてくるあたり、信憑性はあったしIDに変わった個所は見受けられなかった。戦闘服の男が訊く。


「あんた何者だ? おれを尾けてたわけじゃないよな」

「違う」拓は即答した。

「我々は、君が、我々を消すために笠原工業が寄こしてきた人間だと思っている」

 スーツの男が言った。


「そんな人間が、こんなに簡単に捕まるか? 笠原工業に追われてるってことは、あんたらもやっぱり訳ありってことなんだろう」

「わざと捕まったってこともあるからな。下手に詮索しないで、知っていることを話せ」

 戦闘服の男は少々落ち着かないそぶりで声を荒らげた。はっきりしない状況に苛立ちを覚えているのだろう。それは拓も同じだった。彼は声を潜め、どこか恨めしそうに口を開いた。


「…名乗ってもいいが、そのあとあんたらが俺の話を聞いてくれる気がしない」

「ふむ、つまり事務局と敵対関係にある組織…。笠原の製品にハッキングできるということはその関係者か?」

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