捕まった時のレポート(2)

 もう一人は中年の男だった。体格がずいぶん良く、どこかスポーツ選手を思わせた。自分を羽交い絞めにしたのは明らかにこの男だと拓は思った。深く窪んだ眼と堀の深い顔に、不吉さを纏わせた様な顔だった。グレイヘアをオールバックにかっちりまとめ、深い藍色のスーツを着用しポケットに片手を突っ込んだモデルのようなスタイルで、同じく自分を見下ろしていた。


「俺の端末は?」

 しばし沈黙のあと拓が訊いた。声がわずかに反響する。他にも聞きたいことはたくさんあるが、相手も同じだろう。スーツの男が答える。顔の筋肉を最小限しか使ってないような話し方だった。


「調べようと思ったがセキュリティが堅くてな。あれは笠原工業のブランドだろう。だがカスタマイズされている。君は何だ?IDは偽物だろう」

「ただのエクスプローラだよ。痕跡を追って荒地まで来たが見失ってね」

 拓は本当のことを言った。勿論言える範囲ではあるが。すると今度は戦闘服の男が口を開いた。


「ただのエクスプローラが警備オートマタをハックするか? わざわざあの辺境でおれに声をかけたのも何でだ? おれにはソッチの気はないから、そうならお断りだよ」

「俺は女にしか興味ないぞ。……IDの問題でね。バレたらやっかいだろう? ハッキングは仕方なかったんだよ。帰っていいか? ただの誤解だよ。あんたらもなんなんだ」

「我々は事務局の者だ」

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