捕まった時のレポート(1)
無機質なコンクリートに囲まれた広い場所だった。蛍光灯の白光した灯りが目に染みる。首だけ無理やり後ろを向くと、シャッターが3つあるのがわかった。おそらく今は使われなくなった倉庫の搬入口だろう。天井にはダクトが通っていて、どこからか換気扇の音が聞こえる。電源は使えるらしい。
そんな空間にポツンと椅子に座らされ後ろ手に縛られている。足はそのままだったのでジタバタ動かしてみたものの、立ち上がることは自分には不可能だった。
違和感があったのは自分の手首だった。括られているからではなく、いつも付けている端末が無くなっている。ロックが掛かっているから調べられはしないだろうが、じわじわ不安がこみあげてくるのがわかった。前方にはビニールカーテンが垂れ下がっていて、時折揺れている。奥には扉のようなものが見える。開いていた。
その方向から声が近づいてくるのがわかって、拓は唇を噛んだ。二人の男の声で、あまり穏やかそうには聞こえない。
「あれほど一人で飲みに行くなといってあるのに、なぜ行くのか」
「仕事の後の楽しみを奪わないでくれ」
「しかも戦闘服を着たままとは…、何を考えている。相手によっては攻撃対象にされかねないぞ」
「一旦ここに着替えに戻ったら出かけられないだろう」
「当たり前だ。バーにいた男と面識は?」
「ない。ないけどオートマタ関係だ。笠原工業製の機体をハックしていた」
「まったく、危険だと思ったらすぐに呼びなさい」
男がそう言ったところでビニールカーテンがまくられ、二人が倉庫に入って来た。拓は緊張した面持ちで見上げる。
一人はバーで話をした男。少し機嫌が悪そうな表情だが、明るいところで改めて顔を見ると、20代半ばの自分とさほど変わらない年齢なのではないかと拓は思った。腕を組んでこちらを見下ろしている。まだ着替えていないのか、戦闘服を腰に巻いたままだった。ナイフも携帯しているようだ。
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