ピンチ回避のレポート(2)
ほっと胸をなでおろし、ふと視線を感じてカウンタの方を見ると男は腕を組んで訝し気な表情をこちらに向けていた。おもむろに口を開く。さきとは声色も違う。低い声だった。
「あんた、ただのパーツ屋じゃないな。何をした」
「……なにも」拓は視線を逸らすことなく、ゆっくり返事をした。鼓動は早まっていたが慌てるとさらに怪しまれてしまう。ゆっくりとした呼吸を意識する。
「なにも? 互いにオートマタには詳しいんだ。円環の異変に感づかないと思ったんならとんだ素人だな。どういうつもりだ」
声は潜めているが芯の通った物言いに拓はたじろぎそうになるが、自分のペースを保ちつつ口を開いた。大げさにホールドアップのポーズをとる。
実際には、円環の異変に気付かれたことの焦りがじわりと喉の手前までこみあげてきていた。普通は気が付かないはずだ。普通は。拓の脳裏にひとつの推測が浮かんだ。もしもこの男がオートマタであった場合ならそれに気づく可能性はある。
「わかった、白状する。確かに怪しかったかもな…ただ、めずらしい機体だから気になっただけだよ。パーツ屋のさがかな」拓はごまかしながら慎重に言葉を選んだ。
「違法相手ならともかく笠原のとこの正規に手を出すなんて、よっぽど訳ありってことか?」
「へぇ、一目見ただけであの新型オートマタが笠原工業製って解るのも、よっぽどだが」
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