第一印象のレポート(2)

 試合が終わるとモニタに、”荒地で違法機体の残骸が数体発見された”というニュースが放送され、拓は興味のないフリをしてそれを聞いていた。


 内容は、”何者かが無人の廃倉庫に侵入し、そこで稼働していた違法機体をほとんど破壊していったこと”。”通報があって駆け付けた時には何者かは姿を消し、開いた扉から数機の違法機体が流れ出たこと”。”単独犯か複数犯かはまだ不明なこと”。”となりの地区から派遣警備を呼んで、警戒にあたっていること”が放送された。


 拓は廃倉庫の場所を覚え席を立った。別に言わなくても良かったが、男に「お先に」と告げたところで、バーの入り口から入って来たのは派遣警備のオートマタだった。


 女性型で警備の制服を着用し、頭上には円環が回っていた。店の中央まで進んでくる。帯状の円環ホログラムの特徴で、笠原工業製だと彼にはわかる。一般の利用者は気が付かないだろう。新型だった。おおかた、そのテストも兼ねて派遣されてきたのだろう。機体は荒地に不似合いなほど整っていた。


 警備が入って来たことで、飲みに来ていた多くの客が意識的に身を潜めた。誰もかれも、やましい事があるように拓には思えた。自分がそうだから、そう見えているだけかもしれないが。さっきまで穏やかに酒を飲んでいた隣の男でさえも、体の向きを変え少々眉根を潜めているように見えた。

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