自分についてのレポート(4)
あいつと出会った時は、
ここは街の外れだったからある程度廃れてはいたけど、ちょいちょいオートマタのハッキングして情報集めてたよ。遺棄されたオートマタや部品ってのは、そいつが見聞きしたデータが残っている。監視カメラの映像みたいにね。それを調べて発見した不可解なオートマタの信号とか、壊れた機体の残骸を見てきたところだった。
ここで追っていた痕跡が途絶えたから少しの間様子を見ようと思っていた矢先だった。そこにあいつはいた。程よく賑わいのあるバーだった。言い直せば、この店くらいしか行くところがないっていうのが本当のところだった。
程よく薄暗くて、喧しくない音量でダウナーミュージックが流れてる。誰も他の人間のことなんて気にすることなく、好きにできる店だ。そこで大人の男がさ、カウンターでゆっくり、ちびちび酒を飲んでんだ。幸せそうな顔で一人で飲んでる男を初めて見た。誰かが横にいるわけでもないのに。
俺は、一人でカウンターで酒を飲んでる男ってのは、やさぐれた種類の男しか知らなかったから。そいつは穏やかで、愛しそうにグラスを傾けて中身を眺めるんだ。気持ち悪いだろう。どういうわけか、やけに気になってな。俺も久しぶりに穴ぐらから出てきたから気分が良かったんだろうよ。なんとなく声を掛けてしまったことがすべての発端だ。
後から俺の素性を知ったあいつはピリピリしてた。そりゃそうだろう。見た目も中身もほぼ普通の人間だけど、笠原工業が追っている大事な素材って立ち位置の奴が、笠原って名前の俺に会っちまったら、あんな目つきにもなるだろうな。
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