自分についてのレポート (3)

 そんな実情を暴くため、家を出た。失われたDBデザイナーベイビー計画について調べるため、オートマタをハッキングしながら各地を転々としていた。敷かれたレールから降りて進むのは難儀なもんだった。わかっているつもりが甘かった。痕跡は追っては消え追っては消えの繰り返しだった。俺はほとんど戦えないから、危険が目の前にあるとわかればすぐに退いたし、とにかく逃げ回っていたな。


 各地移動していたといっても、実際のところ、ハッキングする時以外に、外出ることはあまりなかった。最初の違法オートマタと言われたウェティブの痕跡を見つけたのもこの頃だった。その時は名前なんてまだ知らなかったけどな。


 普段は穴ぐらの中からリモエク飛ばして活動している。リモエクってのは便利だ。自分のホログラムが飛ばせる。短所があるなら狭範囲高密度の場所でしか使えないってことだ。


 事務局みたいな表立った違法機体の対応局ってわけじゃなくて非合法だが、各地に拠点がある。いつのまにか出来て、いつの間にか人が集まり、いつの間にか無くなる。それが穴ぐら。だいたい地下とか空き部屋に設立されて本人たちは地上に出ることがあまりないからそう呼ばれてる。


 穴ぐらにいるのに、どうして日焼けしているのか? と他所の探索屋に言われたことがあるが、それはもとからだ、遺伝だと伝えた。彼は元気にしているだろうか、と思い出したりする。穴ぐらに来る奴らは互いに素性を明かしたりしない。それのリスクをわきまえているからだ。そういうことが理解できない奴は、向いてない仕事だと思うな。収入源も情報売買くらいしかなくて不安定だから、人は選ぶだろうな。

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