自分についてのレポート (2)

 ちょっと自分のことについて話そうか。


 名前の通り、笠原工業の人間だ。なんの会社かというとオートマタを製造している。警備や医療用が殆どで、この産業のトップを担う会社だ。祖父の代から親がついで、次は俺らの代ってところで、俺は会社の秘密を知ってしまった。その秘密ってのが違法オートマタの製造だった。


 違法は、粗悪に改造された機体も含まれるが、人間ベースで製造された物のことも指す。そのために造られていたのが、ベース用人間素材のデザイナーベイビーだ。その資料を目にしてしまったとき、俺は愕然とした。


 それで、家を出る準備を始めた。皮肉なことに金には困ってなかったから、ひっそりと機材を揃えながらまずはオートマタについて研究をした。あたかも興味のあるふうに研究室や工場に顔を出したが、俺は代表の息子だ。誰も探りに来てるなんて思わなかった。


 でもどれだけ探りを入れても過去資料を調べても、デザイナーベイビーについてのデータはほとんどなかった。ただ、その素材をもとに製造された機体が実在するという資料だけがあり、彼ら(そもそも複数いるのか一人なのかも定かでない)がどんなふうに造られて使われ、もしくは破棄され、今どこで何をしているのかは、わからなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る