第12話 響く悲鳴と真っ赤に燃える剣と紋章



夕暮れ時


サーシャ「そろそろ、帰らないと

     日が沈んじゃうわね」


ユウト「うん、サーシャ今日は、本当に

    ありがとう、凄く楽しかったよ!!」


サーシャ「うん!良かった!!」


お礼を言われ、サーシャは、笑顔になり、

ユウトの、手を引き帰り道を歩く。


そして、帰り道を歩き、広場に着いた頃、

子供の悲鳴が、街に響き渡る。


  『キャーーー!たすけてぇ〜〜!』



その声を聞いた、

ユウトは、悲鳴の方へ向かおうとするが

サーシャに、手を引っ張られ、止められる。


サーシャ「ユウトいっちゃ、だめ!!」


ユウト「でも、サーシャ!!

    誰かが、助けを呼んでる!行かなくちゃ!

    サーシャは、先に、帰ってて!!」


ユウトの、優しさに負けたサーシャは、

一緒に、行く事にするのだった。


サーシャ「もう……私も行くわ…」


そして、ユウト達は、悲鳴が、

聞こえる通りへと向かう。


悲鳴が、聞こえた場所へ着くと、そこには、

ボロボロの服を着た、獣耳と尻尾を生やした

少女が、奴隷商の、豚男に鞭で叩かれ、

悲鳴を上げていた、誰も助けようとせず、

少女は、鞭で叩かれる。


『キャーー、痛い、痛いよぉぉぉぉ』



豚「お前は、いつもいつも失敗ばかりして、

  すぐに返品される!!使えない奴隷がぁぁ!」


少女「ご、ごめんなさい…ごめんなさい…

   ゆ、許して下さいぃ、許して下さい」


 少女は、泣きながら、

 地面に、頭を擦り付け、謝り続ける。


そして豚男がもう一度、

鞭が振り下ろそうとした時、

ユウトが、少女の前に立ち、豚男に言う。


ユウト「やめて!!苦しんでいるだろう!!」


豚「な、なんだ、お前は!?」


豚男は、誰かが、奴隷を助ける事に驚き、

ユウトの顔を見ると、思い出す。


豚「お、お前はこの間

  ビルさんに、売ったガキじゃねーか!!」


サーシャが、ユウトの隣に立ち、

人差し指を、豚男に指しながら、言い放つ。

 


サーシャ「私達に何かしたら、ビルさんと、

     ジルさんが、黙ってないわよ!!」



豚「くっ……だがな、お前達も

  結局は、奴隷だ、人の売り物の、教育を

  邪魔しようっていうんだから、

  何をされても、仕方ないよなぁ〜、ブヒヒ」


豚男は、ニンマリと笑い、鞭を

地面に叩き、ユウト達を脅す。


サーシャ「本当に、あんたは、最低な豚ね!!」


豚男「ブヒャヒャヒャ、なんとでも言え

   ブヒャヒャヒャヒャ」


その時、ユウトは、両手を握りしめ、

豚男の言葉に激怒していた。


ユウト「どうして、どうして、人をそうやって、

    物だって言えるんだ!!」


 

言葉と同時に、ユウトの目が輝き出し、

肩の刻印が消えてゆく。


サーシャ「ユ、ユウト……!?」

 

ユウト「サーシャ…離れてて…」


サーシャ「う、うん」


サーシャは、少女を連れて、離れる。


(サーシャと、この子を、絶対に守るんだ!!!

 イメージするんだ!!大きな炎を!)

 

ユウトの瞳の色が変わり、

炎のゲートが開き、唱える。


『フレア』


頭上に炎が現れ、その炎は、

どんどんと、大きくなっていき、

その炎を見た、豚男は、怯え、後退りする。


豚「ふ、封印の刻印が……そ、そんな馬鹿な!

  なんだよ、ガキのクセに、こんな大きな魔法」


そして、豚男は、転げ尻もちをつく。


    

豚「ちょっ、ちょっと待ってくれ

  もうそんな奴、いらねぇ許してくれぇぇ」


ユウト「わかったよ……」


ユウトが、手を下ろすと、瞳の色が戻り、

輝きが治まっていき、頭上の炎が、消えていく。


ユウト「2人とも、無事かい?」


ユウトは、後ろへ振り向き、

サーシャと、少女の方へと歩いていると、

豚男は、剣を構え、ユウト目掛けて走り出す。


(あのクソガキ、奴隷風情が、

 馬鹿にしやがって!!

 殺してやる、殺してやるーー!!)



サーシャ「ユウト!!後ろーー!!」


ユウトは、振り返ると、豚男の剣を見て、

豚男へと、

魔法を出そうと、手を、豚男に向けるが。


ユウト「くっ……」


封印の刻印を破り、

初めて使った、大きな魔法で、魔力が無くなり、

もう一度、魔法を出す事が、出来なかったのだ。


サーシャ「ユウト逃げてー!!」


豚「死ねー!!クソガキ!!」


豚男が叫び、ユウトを突き刺そうとした瞬間、

髭を生やした男が、現れる



「おい、ガキ相手に何してんだ」


その男は、炎のゲートを開き、瞳を輝かせると、

刀身が真っ赤に燃え、

剣の柄に付いた水晶に、紋章が浮かび上がる

そして、真っ赤に燃えた剣を、

豚男の剣に、振り下ろすと、豚男の剣は、

折れ、豚男は悲鳴をあげる。



『ブギャャャャャャーー」


髭を生やした男

「さっきの話は聞かせてもらった、

 これ以上、この坊主達に、何か

 しようってんだったら、この俺が、許さね〜ぞ」


男はそう言うと、剣を鞘へとしまい、

瞳の輝きが治まってゆく。


豚「ぶひぃぃぃぃ……あ、あんたは、

  勘弁してくれぇぇ〜〜」


水晶の紋章を、見た豚男は、怯え震えだし、

走り逃げ出して行く。


髭を生やした男

「大丈夫か、坊主達?」



ユウト「あ、ありがとうおじさん……」


髭を生やした男

「おいおい、恩人におじさんはねぇ〜ぞ、

 俺は、レノ=ファーベルだ」


ユウト「す、すみません…レノさん

    ありがとうございました!!」


レノ「おう!そっちの嬢ちゃん達も無事か?」


レノは心配し、サーシャに呼びかけるが、

サーシャは、下を向き、

顔が見えないよう、頭を下げお礼を言う。


サーシャ「あ、ありがとうございます」


その時、獣耳の少女は、サーシャに、

しがみつき泣いていた。


『うぅぅぅぅぅぅぅぅ』


レノ「じゃあ坊主、

   あの嬢ちゃん達の事は、任せたぞ!」


レノは、ユウトの頭を撫で、

立ち去ろうとした時だった。


ユウト「レノさん!!お願いがあります!!」


レノ「おう、どうした坊主?」


ユウト「僕は、さっき何も出来ませんでした、

    あのままだったら、2人を、

    守る事が出来なかった………」


真剣な眼差しで、レノを見つめ、言う。


 ユウト「僕は、人を守る力が欲しい!

     僕に、修行をつけてください、

     お願いします!!!!!」


そう言うと、地面に、頭を付け、土下座をする。



レノは、頭を掻きながら悩む。


レノ「ん〜、まぁ最近やる事ねぇーしなぁ〜〜」


そう言うと、レノは、ユウトの肩を掴む。


レノ「まぁ、別に良いぞ〜〜、

   暇すぎて、散歩ばっかりだったしな」

     


 レノは、紙を取り出すと、ユウトに手渡す。

 

レノ「坊主、暇な時にでも、ここに来い」


手渡された紙には、この世界の字が書かれていて、

地図の様な物に、丸が記されていた。


レノ「それじゃ〜なぁ〜〜」



 後ろに軽く手を振り、立ち去っていく。


ーーーーーーー


ユウトは、サーシャと、少女の方へと

駆け寄り声をかける。


ユウト「サーシャ…ごめん、大丈夫だった?」


サーシャ「大丈夫?大丈夫じゃないわよ

     バカ!!バカーーーー!!」

       


 サーシャは、涙を流し、ユウトの胸を叩く。


サーシャ「バカっ、バカっ、

     刺されるかと、思ったじゃない……」


 何度も、何度も、ユウトの胸を叩く。


ユウト「ごめん……」


その時、サーシャの服を、掴んでいた少女が、

心配して、サーシャの服を引っ張り呼びかける。

  

獣耳の少女

「お姉ちゃん、大丈夫?」


サーシャ「ごめんね、大丈夫よ!」


サーシャは、涙を拭い笑顔を作る。


サーシャ「そういえば、貴方の、

     お名前を、聞いてもいいかしら?」


そう言うと。獣耳の少女の頭を撫でる。


獣耳の少女

「シィーロ=バネット、です……」


サーシャ「よろしくね!シィーロちゃん」


シィーロ「うんっ!」


シィーロは、笑顔になり、尻尾を振りながら頷く。


シィーロ

「お兄ちゃんと、お姉ちゃんのお名前は?」


ユウト「僕は、みやぎゆうと

    よろしくね!シィーロ!」


サーシャ「サーシャ=ミューネ、よろしくね!」


シィーロ「ユウトお兄ちゃんと、

     サーシャお姉ちゃん!!」


シィーロ「ユウトお兄ちゃん、

     助けてくれてありがとう!!」


ユウト「うん!無事で良かったよ!!」


そう言うと、ユウトは、シィーロの頭を撫でる。


そして日が沈み、辺りが暗くなり出す。



サーシャ「ユウト!そろそろ帰るわよ!!」


ユウト「サーシャ……シィーロどうしよう…」


サーシャ「連れていくしかないでしょ!!

     ビルさんと、ジルさんなら、

     事情を話せばきっと、

     分かってくれるわ!!」


ユウト「う、うん……」


 サーシャと、ユウトは、シィーロと手を繋ぎ、

 帰りを急ぐのだった。

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