第7話 はじめての朝




朝日が昇る頃、レオは、ユウトより先に

目を覚まし、布から出ると、身体を伸ばす。


ーーーーーーん〜。



レオは、ユウトの顔を覗き込み、肩を叩く。



レオ「ユウトーー、朝だよ!」


レオの声に、ユウトは、目を覚ます。


ユウト「うっん、おはようレオ」


ーーーーーおはようユウト!


ユウトは、布から出ると、

腕をぐっと上げ身体を伸ばし、

レオと、布を片付けはじめる。


 


そして、布を片付けていると、

奥の部屋から、眠そうに目をこすりながら

髪の毛が、ボサボサの、

サーシャが、出てくると、レオとユウトに

気が付き、軽く手を振り、挨拶する


ーーーーーおはよう……。


サーシャの後に、扉を開けてベルが現れ、

2人は、奥の部屋から、

手洗い場へと向かうようだった。


ベルは、2人に、

丁寧に頭を下げて、挨拶をする。


ーーーーー2人とも、おはようございます。


レオとユウトは、布を片付け終わり、

サーシャとベルに挨拶をする。


レオ「2人ともおはよう」


ユウト「お、おはよう」


ユウトは、サーシャのボサボサの髪に驚き、

レオに近づくと、小さな声で

サーシャの髪の事を聞く。


ユウト「レ、レオ、サーシャの

    髪が、す、凄い事になってるけど、

    い、いつもあんな感じなの?」


レオ「うん、いつもあんな感じだよ、

   多分ねユウト……サーシャはね」


ユウトの耳元に、近づくと、小声で話す。


ーーーーう、うん……。



レオ「サーシャは、多分ね、

   寝相が凄く、悪いんだと思う……

   よく奥の部屋からなんだけど

   ベルの呻き声が、聞こえるんだ……」


ユウト「そ、そうなんだ、サーシャは、

    寝相が、悪いんだね」


サーシャは、立ち止まり、

眉をピクピクさせながら、

腕を組み、眉間にシワが寄っていた。


レオ「だからね、ユウト、

   たまにね、ベルの目の下を見ると、

   クマがあるんだけど…きっ」



レオが、何か言いかけた時、

サーシャは、レオの方へ走り、ジャンプする。


ーーーーーーーーーはぁっ!!!!


そして、飛び上がったサーシャは、

レオに、蹴りを喰らわすのだった。


ーーーーーーーごふゥゥっっっ。



 レオは、ユウトの前から、消え

 吹っ飛んでいく。


ーーーーーーーーーードォーン!


吹き飛んだレオは、壁へとぶつかる。


 ユウト「えっ!?」


ユウトは、一瞬の出来事で何が起きたか

分からなかった、

そして、サーシャは、ユウトの方へと向うと、

拳を振り上げ、ユウトの頭へと振り下ろす。


ーーーーーーゴスッ。


ーーーーーーう、うっ…。


ユウトは、振り下ろされた拳の

痛みで、頭を抑える。


ユウト「いてて…、

    サ、サーシャ、い、痛いよ……」



頭を、抑えながら、ユウトは、恐る恐る

顔を見上げると、サーシャが、

凄い剣幕で、ユウト達を、睨みつけていた。


サーシャ「ユウトー、レオー、

     私はね、耳が凄く、良いのよ〜、

     次はね〜、こんなんじゃ、

     済まないわよ……ふふふ♪」



指を、ポキポキとやりながら

ユウトと、レオに対して、

サーシャは、不敵な笑みを浮かべる。


ユウト「サーシャ、ご、ごめん、そ、その、

    初めて、サーシャの、寝癖を見て

    驚いちゃって……ご、ごめんよ」


サーシャ「ウフフ♪良いのよ〜ユウト」


サーシャは、ユウトの両肩を掴み、

作り笑いをして言う。


「でもね♪次は、ユウトも、レオみたいに、

 吹き飛ぶかもしれないから、

 言葉には、気を付けてね〜〜♪」


サーシャの、作り笑顔に、ユウトは、

恐怖を感じ、唾を飲み込み、返事をする。


ーーーーーーーーゴクリ。


「はっ、ハイ!!」


サーシャ「分かってもらえて、良かった♪」


ーーーーーーウフフフフフ。


そう言うと、サーシャは、

手洗い場へと、去っていく。



(いてて、まだ、痛むけど、

 でも、あの痛みと違う……ん〜、嬉しい?

 こんな痛み、初めてだ)


ユウトは、頭をさすりながら、

サーシャから、殴られた、痛みと、

母から殴られた痛みは、違っていて、

嬉しい、そんな感情を抱いていた。



そうしていると、吹っ飛んでいった

レオが、腰を抱えながら立ち上がる。


ーーーーーーいてて………。


レオは、腰を押さえながら立ち上がる。


ベル「ふ、2人とも大丈夫?」


レオと、ユウトを気遣い声をかける。


レオ「う、うん大丈夫だよ!」


ーーーーーーーーパタン。


その時、扉が開き、ビルが、中の様子を確認する。


ビル「起きてるか?」


レオ「うん、ビルさん、おはようございます」


ユウト「お、おはようございます」


ベル「おはようございます」

 

ビル「おう!それじゃあ、

    レオ、新入りに仕事を教えてやれっ」



ーーーーーーうん、任せといて


そう言うと、

レオは、クワを両手に持ち、片方を

ユウトに手渡すと、

扉を開け、ユウトに声をかける。


レオ「ユウト、行こう!」


ーーーーーーうんっ!!


2人は、扉を出て、外へと歩き出すのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


レオは、ユウトに畑を案内して歩いていた。


レオ「そういえば、ユウトは、畑仕事は、

   やった事は、あるかい?」


ユウト「うーん、前の世界にも、

    畑仕事は、あったんだけど

    やった事は、ないんだ……ごめん」


レオ「いや、大丈夫さ!ビルさんが、

   教えてやれって、言ってたから、

   今日は、一緒についてやろう!」


ユウト「うん、ありがとう」


レオ「それじゃあ、ビルさんが、

   小屋の方で、準備をしてると思うから、

   行こうか!」


ーーーーーうん!

    

レオは、畑の案内を終えると、

2人は小屋へと向かうのだった。



そして、小屋へと着くと、ビルが

畑に撒く、肥料の準備をしていた。


ーーーーーおう来たか!お前達!


レオ「はい!ビルさん、畑の案内は、

    終わったよ!」


ビル「そうか、ありがとよ!

   そういえば、

   坊主の名前はなんて言うんだ?」


ユウト「ぼ、僕は、宮城悠斗って言います」


ビル「ユウトか、これからよろしく頼むぞ!」


ユウト「は、はい!ご、ご主人様、

      よ、宜しくお願いします!!」


ビル「ワハハハハハァ、ユウト、

   そんなに、改まらなくても良いんだぞ!

   それから、俺の事は、ビルで良い」



ビルは笑い、ユウトの肩を触り、

ユウトの緊張をほぐそうとする。


ユウト「ハ、ハイ!ビルさん!!

    あ、ありがとうございます!」



ビル「おう!」


レオ「そういえば、ビルさん!

   今日の、仕事なんだけど、

   ユウトに、付いて教えても良いかな?」


ビル「おう、任せたぞ!それから、

   今日は、初めてだろうから、

   あんまり無茶は、させないようにな!」


レオ「うん!」


ユウト「ありがとうございます!」

    

ビル「そういえば、サーシャと、

   ベルは、どうしたんだ?」



レオ「サーシャとベルは、多分、

   サーシャの寝癖直しで、遅れてると思う」


ビル「そ、そうか、サーシャの、あの寝癖は、

   まぁ、仕方ないな……」


 

そうして2人の話をしていると、

サーシャとベルが、走ってやってくる。


ーーーーーーーーハァハァ。

 

サーシャ「ビルさん、

     ごめんなさい、遅くなっちゃった…」



ベル「はぁはぁ、み、皆さん、

    遅れて、す、すみません」


ビル「おう!それじゃあ、お前達、

   今日も宜しく頼むぞ!!」


ユウト達は、ビルの言葉に返事をする。

 

ーーーーーーはい!!



 そして、サーシャは、レオを睨み、

 さっきまでの話を、問い詰める。

 


サーシャ「レオ〜〜?さっきまで、私の話を

     してなかったかしら〜〜?」



 レオ「え……?さっ、さっきまでは、

    畑の話を、してたよ」


 

サーシャ「へぇ〜〜、そうなんだぁ〜〜、

     寝癖がどうとか、聞こえた、

     気がしたんだけど〜〜」


 レオ「そ、そんな事、言わないよ!

    アハハ、疑い過ぎだよ!

    僕の寝癖を、

    ユウトに直してもらってたんだ、アハハ」


 手を振りながら、苦笑いし、必死に、誤魔化す。



サーシャ「ふ〜〜ん、まぁ、良いわ、

     今回だけは、遅れたし、

     聞かなかった事に、してあげる〜」


  

 そう言うと、

 サーシャとベルは、入れ物に入った、

 肥料を持ち、畑へと向かう。




 畑に着くと、サーシャとベルは、

 肥料を撒いていき、その後に、レオとユウトが

 畑を耕して行く。


 

 

 昼下がり頃、ユウト達を、呼ぶ声が聞こえる。


  ビル「おーい、お前たち、飯の時間だー!!」


  『はーい』


 ユウト達は、返事をすると、

 小屋へと向かうのだった。



 

 小屋へつくと、外に机が置かれていて、

 机の上には、美味しそうな料理が並んでいた。


 パン、チーズ、サラダ、骨付きの肉

 トロトロの卵焼き、それを見た、

 ユウトの口の中はヨダレが溢れる。


  レオ「ユウト食べよう!お腹ペコペコだ!」


  ユウト「うんっ!」


 ビル「よしっ、食べるぞぉ〜」


 そして、5人は、手を洗い、席に座ると、

 手を合わせる。


 『いただきまぁーす』


 

 

 ユウトは、まず、骨付きの肉を手に取り、

 口いっぱいに、頬張ると、口の中に

 広がる肉汁、スパイスの効いた味付け、

 あまりの美味しさに、

 涙を流してしまうのだった。



 (お、美味しい……

  こ、こんな美味しい食べ物初めて食べた……)


なぜ、ユウトが、ご飯を食べて、

何故、涙を流したのかは、物心がついてから、

ユウトが、口にしたのは、

醤油のかかったそうめんだけだったのだ。



学校の給食は、ユウトにとって、

唯一、色々なご飯を食べる事が出来る、

ご飯だったが、

虐めが始まると同時に、学校の給食は、

土や、虫が入っていたりと、

まともに、学校での給食を、

食べる事が出来なかったのだ、

その為、ユウトが、今まで食べた物といえば、

母から与えられる、

醤油のかかったそうめんだけだったのだ。



 レオは、ご飯を食べ、

 涙を流すユウトに気が付き、心配する。

 


ーーーユ、ユウトッ?大丈夫!?


ユウト「うん、大丈夫!

   あまりの美味しさに、涙が出ちゃった…」


料理を運ぶ女の人が、ユウトの、涙に気付き、

ビルに問う。


「ビルっあんた、この子を

  いじめたんじゃ、無いだろうね!!」


ビル「ジル、待ってくれ俺はなにもしてねーよ」


ユウト「ち、違うんです、すみません、

   こんなに、美味しいご飯初めて食べて……

   あまりの美味しさに、涙が出ちゃって……」


 ジルは、ユウトの言葉に喜び、笑顔になる。


ジル「まぁ!嬉しい事、

   言ってくれるじゃないか〜〜!!

   それじゃあ、今晩も、

   美味しいご飯を作らないとね♪」


 そういうと、食べ終わった皿を下げ、

 ジルは、嬉しそうに、スキップをして、

 洗い場へと向かう。

 

ビル「全く、ジルは…褒められると

   すぐあぁなっちまうからな……」



ユウト「ビルさん、

    ごめんなさい、僕のせいで……」



ビル「ユウト気にするな!

   それに、俺も、ジルの料理を、褒められて

   嬉しいからな、さぁ、いっぱい食べな、

   ワハハハハハ」


ユウト「ハッ、ハイ!」


ビル「今日の晩ご飯は、ご馳走だ!  

   またこの後も、宜しく頼むぞ!!」 

   


ーーーーーーーーーはぁーい。


そして、

ご飯を食べ終えると、ユウト達は、仕事へと戻る。


ユウトは、知らない世界に転移し、

奴隷という身分になったのだが、ユウトは、

幸せを感じていたのだった。



何故なら、初めて、母以外の人と話し、

友人と、食卓を囲み美味しいご飯を食べ、

初めて体験する仕事に、疲れていたが、

ユウトの顔は笑顔で溢れていた。


そして、日が沈む頃、仕事が終わる。

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