【改稿版】第7話 十万人記念凸待ち配信(その5)
『えっと、カグラさん? 大丈夫?』
『だ、だ、大丈夫よ! ユキさんに心配されるようなことはありませんわ! そ、そうよ、いつもよりちょっとリスナーが多いから緊張しただけですわ!』
ビシッと僕に指を突きつけてくる。
でも、それは普段の自分のリスナーが少ないと言っているようなものなのだけど……。
それは……羨ましいよね。
僕のリスナーも一桁とは言わないから百桁ほど少なくなってくれないかな?
すでに同時視聴は十万人を優に超えている。
そもそも見ていたら喋れなくなりそうなので、そこは詳しく見ないようにしていたけど。
『えっと、今日は来てくれてありがとうございます』
『……なんかよそよそしくないかしら? 同じ同期でしょう?』
『そ、それはそうだけど……』
こよりさんや彩芽とはよく会っていることもあって意外と普通に話すことができる。
でもカグラさんは逆にほとんど話したこともないためにどうしてもまだまだ緊張が勝ってしまうのだ。
『それよりもあなた、今日は言いたいことがあってきたの。よろしくて?』
『な、何かな?』
あまりの迫力に僕は思わず段ボールの中に隠れたくなる。
『あなた、わたくしのこと、避けておりません?』
『えっと、そ、そんなことないよ?』
『そんなことありますわ!! だってココネさんやユイさんとはもう何度もコラボをしていらっしゃるのに、わたくしとはまだゼロ。ゼロですわよ! これを避けてないと言えますかしら?』
グイグイと近づいてくるカグラさんに僕は思わず後退る。
『そ、それはたまたま。たまたまだよ……』
『そうですか? それならこのわたくしとコラボしましょう。誰が気高く気品ある真の配信者か競い合いましょう』
『えっと、僕は別に気高くもないし気品なんてないし、配信は……さ、最低限で良いから』
『そういってまた避けるつもりでしょう? すぐにマネちゃんに連絡を入れておきますわよ』
突然カグラさんが静かになったかと思うと遠くの方から声が聞こえてくる。
『えぇ、そうよ。今週、どこか空いている所でコラボさせて欲しいのよ』
もしかして本当にマネちゃんに電話してるの? しかもミュートにするのを忘れて?
『本当!? ありがとう。ふふふっ、きまりね。それなら早速ユキさんを驚かせに行きましょうか。マネちゃんからこんなにすぐに許可を頂いたなんて知ったらきっとびっくりして面白い声を上げるわね』
全部聞こえちゃってるのでもう驚きようがないのだけど……。
『それに土曜日ならオフコラボにしてもいいかもしれないわね。ユキさん、本人もすごく可愛らしいみたいですしね』
ど、土曜日なんだ……。
しかもオフコラボ……。拒否する方法はないのかな?
『ふふふっ、ユキさん。お聞きなさい!』
『えっと土曜日にコラボをするんだよね? 本当にオフコラボするの?』
『あわわっ、ど、どうしてそれを!?』
嬉しそうに笑っていたカグラさんだったが、コラボの日程を知った瞬間に驚き慌てていた。
『えっと、聞こえてた?』
『くっ、まさかユキさんが超能力者だったとは』
なんでそんなことになってるのだろう?
『まぁいいわ。そんなわけだから土曜日は迎えに行くわよ。それじゃあね』
『あっ、ちょ、ちょっと待って。まだオフコラボにするかどうかは……』
カグラさんはあっさり去ってしまう。
お約束のトークカードすら使う余裕もなく……。
突発的にカグラさんとのオフが決まってしまった僕はあまりにも困惑しすぎて、その後の配信内容が全く記憶に残っていない。
残りの二期生たちとも当たり障りの無い会話をしていたはずなのに……。
基本的にこよりさんにお任せし続け、気がついたら記念配信の枠が終わっていた。
「こ、こんなはずじゃ無かったのに……」
僕は思わず頭を抱える。
しかし、決まってしまったものは仕方ない。
今の僕がまずやるべきこと……、それは――。
【雪城ユキ】 今日0:21
やっぱりオフコラボ、なしにしませんか?
【神宮寺カグラ】 今日0:22
何を言ってるのよ! 18:00から開始で予定立ててるからね。やる場所は配信内容を考えて私の家でどうかしら?
【雪城ユキ】 今日0:24
え゛っ!?
【神宮寺カグラ】 今日0:24
変な声を上げてどうしたのよ?
【雪城ユキ】 今日0:26
な、なんでもありません。ちょっとびっくりしただけで。そ、その……、た、例えばシロルームの部屋を借りるというのは?
【神宮寺カグラ】 今日0:27
ダメね。料理対決をするのだから。
【雪城ユキ】 今日0:29
僕、料理なんて最低限のものしか作れませんよ?
【神宮寺カグラ】 今日0:29
それでいいわよ。絶対に負けないからね。
結局オフコラボを断ることはできなかった。
それどころか料理対決なんて……。
「ぼ、僕、そんな人様に見せるような料理、作れないよ……」
これがこよりさんならどんな料理も作れるのだろうけど、……ってそうだよね。
「うん、作れないなら相談したら良いんだよね」
僕はすぐさまこよりさんに連絡を入れるのだった。
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女性限定なのにスカウトされた僕、なぜか美少女VTuberとなる 空野進 @ikadamo
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