神代のルーン使い 第8話
↗
「断る」
と、グレイはレナからの誘いを躊躇なくも蹴った。
レナ……偽名ではあるが彼女は手を下げる。
「……理由をお聞きしても?」
グレイは「勘違いない様に言うと」と言い始める。
「俺も別にその悪者どもがどうでもいいって訳ではない。寧ろ俺もそういったのには腹立つ」
グレイは「でもな」とレナに指さす。
「あんたらが貴族とか王族に関係しているのが理由だ」
「…というと?」
「
グレイの顔は嫌なものを見ている顔……ではなかった。
寧ろ真剣な顔。
向き合いたくなくても向き合わなければならない事への向ける顔である。
グレイとレナは互いを見つめ合っている。
先に目を閉じたのはレナの方だった。
「……わかりました。勧誘はやめましょう」
勧誘をする者にしてはあっさり手を引いた。
「話しを聞いて貰えてありがとうございます。しかし、」
「今の話しは内緒に、…だな」
「さすがは、話しが早いですね」
レナは「ですが、ただで内緒にして欲しい訳ではありません」と付け加えてはシズクに手のひらを向ける。
シズクはどこに隠していたのか、懐から自分のメイド服のスカートより大きなカバンから何かを取り出し、それをレナの手の上に乗せた。
それは……金貨袋?
「これでどうか黙っていて欲しいのです」
「……本気か?」
今の言葉は、それを受け取って自分が裏切るとは思わないのか? という意味でだ。
帰ってきたのは、わかっていると言うように「はい。そうです」の言葉だった。
「……何故そんなに信用をする」
「私、人を見る目はいい方なんです」
微笑みながら誤魔化すレナ。
明らかに何か企んでいるようだった。
「……わかった。貰って置こう」
元から喋る気にもならない。
それに、行方不明……の悪事が世間にばれようともどうせ何等かの手段でその情報は伏せられる。
ただ、問題なのは行方不明のさらなる理由。
わさと先回りにして触れないようにしたのは正解だったとグレイは感じた。
何故なら、それは推測ではなくある根拠による事が頭に真っ先に思い浮かんでいたから。
グレイはレナの手の平にある金貨袋を掴み、そしてレナは逆の手のひらを出す。
「ありがとうの握手です。ただのお礼の」
「あ、そう」
気は進まなかったが、差し出された握手の手を握る
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
衝撃。
「「――――!!」」
否、何かの違和感か。
それが痛みのない電流が走ったかのように鳴り響いた感覚がした。
「……お嬢様?!」
はっ!? とシズクの言葉にグレイもレナも正気に戻りレナの方から手を離した。
「で、ではもうこれで終了にしましょう! 夜遅くにすみませんでした」
「……ああ」
手に残る違和感を感じながら、レナの挨拶を受けてグレイは部屋を出た。
「……セレナ様。質問をよろしいのですか?」
「……なに?」
紅茶を啜るレナ……セレナ=アルフレットが反応する。
「あのままでよかったんですか? それにあれほどの実力でEランクっていうのも怪しすぎると思うのですが…」
「そんなことは問題でもなんでもないわ」
断言したセレナは啜っていた紅茶のカップを一緒の皿とともにテーブルに置く。
「問題はね。この後なのよ」
「……後、ですか?」
シズクは首を傾げる。確かに状況的には彼女を守る事が大事だ。
でも、セレナが言っている事は彼の事を言っているようだった。
「ええ。何故なら、近い内に別の場所でまた会うのだから」
意味深な事を口にして紅茶を啜る。
「……考える事は多いけど、そろそろ寝ましょう。結界の展開お願いね」
と飲み終えた紅茶を皿に置き、シズクは「承知いたしました」と返す。
「……? これは?」
結界を発動させようとしたシズクはある事実に気づく。
→
「……お母さん? ……お父さん…どこ?」
→
一日の終わりは寝る前に振り替えって出た感想で決まる……ってくだらない事を言っていた冒険者の言葉を思い出した。
グレイにとってどうでもいい話しだったのだが、今だけは納得していた。
レナの部屋を出た直後にふとそんな事を思っていた。
彼女はいい人だ。
間違いなく、悪を許さない心を持ったいい人だ。
でもグレイとっては二度も関わりたくもない相手である。
話し合いもこれっきりにしたい。
自分の部屋、3号室の前に来てカギをかけておいたドアを開く。
その中には誰もいない。
やっと一日の眠りにつけられると思い、装備を抜き、紙一枚にルーン文字を書く。
それを口を開いてハムっと舌に付けた。
ルーン文字の効果が現れるのを感じて、……急激に眠気に襲われる。
倒れるかのようにベッドの上に横になった。
いつもの眠気に精神を寄せて……そのまま目を閉じた。
……そういえば、結界はそのままにしていたっけな。
→
「……いた」
↘
↓
↘
↓
いつまで寝ていたんだろう。
どうやら真昼ではないようだが、朝ではない時間なのはなんとなくわかった。
というより、朝にもなっていないとわかる。
師匠……いや、あの神殺しの化け物ならこんな時間でも無理やりにでも起こして修行をやらせてただろうが、あの化け物はいまいない。
よって、グレイの眠りを邪魔する者など一人もいない。
「……なんだ?」
でも妙な感覚に襲われる。
決して重くはないものの何かに上から押させる感覚があった。
そしてそれは、ベッドの上に体を横に向けていたグレイの胸のあたり――いや、グレイを抱いている形で一緒に寝ているその子の腕だったとわかった。
その子は、昨日グレイが連れてきた白いと人形のようだった謎の女の子だった。
まだ眠気が完全に冷めてないまま状況把握ができてもそれ以上は頭が回らなかったグレイはそのまま上半身だけを起こす。
両手で顔と目を強く推し、ため息をつく。
そしてまた振り返ってみても……やはりその子がいた。
「……」
なんでなのか、その理由が思いつかない。
なんとなくわかるのは夜中のうちにこの子が起きてグレイのベッドまで来て一緒に寝てただろうという事だ。
ここで疑問が起きる。
「……カギをか掛け忘れたのか?」
と、思いベッドから離れて部屋のドアを開こうとする。
やはり鍵はかけられていた。
「……魔術?」
と言ってみるものの、すぐその可能性を外す。
魔術が使われてたら、グレイの結界で侵入者判定されてすぐにもグレイが起こってたはずである。
「なにが起きた……」
と、少し考えてドアから目を離しベッドの女の子の方に向けると。
起きていた。
人形のようだったその子が目を開き、上半身を起こして、グレイを見ていた。
しかし、この口から飛び出た言葉はグレイをさらに困惑させる。
「……おはよう、お父さん」
「……は?」
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