第13話ごめん、ヘステさん
「いや〜、すごいなリンドウ君。まさかソルネ流の奥義を軽々と止めてしまうなんて。あれレグリア先生にしか止められた事無かったんだぞ」
「ああ、やっぱレグリアくらいにしか止められませんでしたか、あれ。まあ、かなり強力な『技』でしたからね〜」
模擬戦を終えた俺とヘステさんはお互いの戦い方について感想を言い合う。
「すげぇよあいつ、ギルドマスターに勝ちやがった」
「ああ、しかも魔素量がまったく無いんだぜ、信じられねぇ」
「やっぱ貴族連中の考えてる魔素量至上主義はあてにならねえって事だな」
観戦していた冒険者達のザワザワがハッキリと聞こえてくる。
「いや、ていうかそれよりも…………」
「「「「壊しすぎだ!!!」」」」
すると、冒険者達は揃って大声を上げた。大きすぎて無視できないレベルだ。それほど彼らはツッコミたかったのだろう。
でも、まああれだな。彼らの言う通りだ。辺りを見回してみると天井はほぼ崩れ、地面は抉られ、壁もギリギリ天井を支えていられるレベルだった。
多分俺の"
「ハハハハハハハっ、これはたしかに壊しすぎたな!」
「はは、ですね。これは壊しすぎですね、はははっ」
やばい、ヘステさんに釣られて笑いそう。
「笑い事じゃ無いですよ師匠! リンドウ君もつられて笑いそうにならないで! どうするんですか! これじゃしばらく修行が出来ません!」
俺が笑いそうになっていると、観客席にいたイリーネが大声を上げながら寄ってくる。
「まあ許せイリーネ、久しぶりに本気を出してみたかったらな。それにお前は明日から学園に通うんだからここには来なくてもいいだろ」
「そ、そうなんですけど……」
「それにお前はもう十分強い。ステファニーに勝ったんだろ? まだ入学すらしてないのにそこまで実力があったら大丈夫だ。それにお前の修行相手なら「コラーーーーーー!!!」
ヘステさんの言葉を遮るように半壊した模擬戦場に眼鏡をかけた真面目そうな男性が入ってくる。
「げっ、フラス!」
どうやらフラスと言うらしい。あれかな、ヘステさんの秘書的な人なのかな。
「何やってんですかヘステさん! 仕事をサボってどっか行ったかと思えば! 何をサボったついでに模擬戦場を半壊にしてるんですかあなた! ここの修繕費結構高いんですよ! 相手は……まさか先程話してたリンドウ君という少年ですか。彼にも説教をさせてもらいます! 力の強い者は自重という言葉を覚えなければならないという事を骨の髄まで覚えていただきます!」
「ヤバイっ、逃げろリンドウ君! 恐らくこの状況だと君まで捕まってしまう! あいつの説教は長いから………………っていない! まさか自分の名前が出た瞬間『技』を使って逃げたな! くそっ、卑怯者めっ。逃がしてやろうとしたがやっぱ無しだ! 全力で探し出して君にも説教を受けてもらうぞ!」
「どこに行くつもりですか、ヘステさん。どうやらリンドウ君には逃げられてしまったみたいですが、彼は物のついでです。あなたにはこれから三時間ほど話さなければならない事があります」
「ギャーーーーー!!!」
そう言って、フラスさんはヘステさんの襟を掴んで引っ張って行った。
それに伴い、冒険者達も次々と興奮した様子で模擬戦場から出て行く。きっと俺とヘステさんの模擬戦が面白かったのだろう。
「皆出て行ったからもう隠れなくていいわよ」
イリーネのその声と共に俺はイリーネの背後から姿を現す。フラスさんが俺の名前を出した瞬間、"
「いや〜、ありがとなイリーネ。お前なら隠してくれるって信じてたぜ♪」
「その音符記号初めて聞くけどいつも使ってるの? なんかキャラじゃ……いや、あなたのキャラね。ごめんなさい、忘れて。それより早く行きましょっ、人が戻ってこないとも限らないし」
「あ、ああ。そうだな」
そうして俺とイリーネは模擬戦場の壁に空いた穴から外へ出た。
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