第9話イリーネと再会しました
結構真面目なやつっぽいからここからはおふざけ無しだな。
「まあ、そうだな……俺の目的はただ一つ。魔素量が人の強さのすべてを決めるっていう固定概念をぶち壊すためだ」
「…………なるほど、それは確かに重要ですね。それにこの学園もその目的のためには最適解ですね」
やっぱ分かってくれたか。さっすがはブレイズの弟子! 優秀だね〜。
「それではクラスはその目的のために最適であろう最低クラスのFクラスにしておきます。その目的だとSクラスで実力を見せるより最底辺であるFクラスで活躍した方が良さそうですから。まあ、僕がしなくてもほとんどの教員の意見によってFクラスになるとは思いますが」
「あれ、この学園を選んだ理由は聞かないんだ」
俺が疑問を口にすると、レグリアは疲れたように口を開く。
「あなたがこの学園を選んだ理由は大体検討がつきます。この学園は正直腐ってますからね。僕が赴任する前から続いていた圧倒的魔素量至上主義、人の努力ではなく生まれ持った才能しか見ない。それは生徒だけではなく寧ろ教員達の間に浸透しています。何名か立派な教員はいますが、それもかなり少数。こんなのでこの国最高の魔法師養成学校というのが笑わせますよ」
あ〜、これあれだ。相当疲れてんな。一応魔素量至上主義がこの世の中の常なんだけど。まあレグリアは結構な時間を俺達と過ごしてたからな、考え方が俺達色に染まってるんだろ。
それにしても愚痴か〜、これ分かるぞ。一旦肯定するのがいいんだ。そしてレグリアが愚痴を言っている相手の擁護も一応する。レグリアの意見が傾かむき過ぎないようにな。うん、これがベストだっ!
「いや〜、分かるよレグリア。その気持ち多いに分かる。でもね〜……「いや、ここの学園長をやっていないあなたには分からないでしょ」
俺が考えた絶対正解な愚痴に対する答えをしようとしたらなんか遮られたんだけど。あれ、俺そこまで適当な事言おうとしてた?
いや、さっきのは割と真面目だったんだけど。
「まあ、あなたの目的が知れただけでも満足です。お答えいただきありがとうございます。リンドウ様は何か知りたい事などございますか?」
「そうだな……じゃあーーー」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
レグリアとの再会を終えて、明日まで暇になった俺は今、街中でブラブラしていた。
さあて、これから何をしよっかな〜。今やもう数が少なくなった武器屋に行くのもアリだし、腹ごしらえもありだな〜。もしくはまだ夕方だけどもう寝ちまうか?
「あれ、あなたはたしか……」
そんなこんな考えていると、後ろから女性に声をかけられた。振り向いてみると、そこには入学試験の日に校門で会ったイリーネ・ユグドラシルの姿があった。
「ああ、イリーネか。入学試験の時の校門ぶりだな」
「ええ、そうね。まだ城下町にいるって事はあなたも受かったって事でいいのよね?」
「そうだな、合格通知は来た」
「それはよかったわ。ならあなたも通えるのね。そうだ、ちょっとお茶しないかしら?」
「それは全然いいけど……」
言葉を切りながら俺は辺りを見回す。
「お前王女なのに一人なのか? ていうか変装は? お前王女なんだろ?」
「ええ、そうよ。私の場合中途半端な護衛は足手纏いになるのよ。変装も大丈夫よ、身分が高すぎて逆に誰も話しかけて来ないから」
ああ、なるほどな。たしかイリーネって『栄光の世代』とか言われるほど強かったっけ。まあ、『栄光の世代』がどのくらい強いのかは分からないけど。
変装に関しても合点承知の助だな。
えっ、古いって? …………俺もそう思う。今の忘れて。
「じゃあ行きましょう。オススメの店があるの」
「高いのは無しにしてくれよ」
「ええ、分かってるわっ」
そうして俺は妙にテンションの高いイリーネの後に付いて行った。
「いや〜、ここのサンドウィッチ美味しいのよね」
そう言いながらイリーネはサンドウィッチを美味しそうに食べている。その様子を俺は目の前にあるサンドウィッチに手を付けずにただただ見ていた。
「あら? 食べないの?」
「いや、王女様もこういう物食べるんだな〜って思って」
「失礼ね、私もこういう物くらい食べます。民草の食事内容とか味わっとかないと王族として失格だから」
なるほどな、俺の王族のイメージとは全然違うのか。王族ってもっと高級な物しか食べないイメージだったけど庶民の気持ちを知るのも大事って事だな。
あっ、そういえば王族でレグリアからされた話を思い出したけどあの話はタブーなのか? まあ、一応質問してみるか。
「なあ、今の国王って『黙示録のラッパ吹き』の【第四のラッパ】、"
そう聞くと、イリーネはサンドウィッチを皿に置き、先程までの笑顔を消した。
あれ、やっぱ不味かったかこの話題?
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