第2話
よく、人を好きになるタイプだった。これから始末する人間に対しても、なんとなく、好きかもしれないという感情を抱いたりする。
きらいになることは、ほとんどない。人というもの、その営みや生きる姿自体が、好きだから、だろうか。
コンサートの会場。
たくさんの人が集まって、アイドルの歌を聴いている。今回の目標は、あのアイドルだった。
殺し屋をやっていた。いろんなところから、いろんな依頼が来る。殺しかたのせいだろうか。
対象の、心を、殺す。
殺された人間は心が死ぬので、並一般の人生を送るようになる。考えず。ものも言わず。ただ働き、ただ眠り、ただ生きる。他者との接続が、完全に途切れてしまう。そういう、殺しかた。
心は人によって違うので、殺す手段はまちまちだった。ほとんどはエアガンで撃ってあげる方式だが、たまには切れないナイフで切ったふりをすることもある。恐怖を与えずに死を連想させることができれば、何でもよかった。恐怖は、死とは最も遠い。こわがっているうちは、生きているから。
舞台で歌って踊る、アイドル。やわらかく、あたたかい歌声。あんな声で歌うというのに、殺しの依頼をされるのか。人というのは、こういう部分に関してどこまでも残酷なのだなと、ちょっと思った。
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