アズマ国
四十二日目『戦争準備』
アズマ国。
その国の玉座に座る少年は、何の前触れもなくため息をこぼした。
「ノヴァ。どうかしたの?」
「リンネ。どうやらここにリーフィアたちが来るようだよ。しかも今の世代の勇者を引き連れて」
「へえ。それは面白いことになりそうだね」
リンネは笑みを楽しそうにノヴァの膝の上に座った。
「リンネ。俺たちの国はもうすぐで完成する。そしたら……、いや。何でもない」
「気になるよ。途中で言うのをやめられたら」
「いつか言うさ。それに今は羽目を外す暇はないらしいしな」
ノヴァが座る玉座へと一人の男が入ってきた。
「ノヴァ様。ブルー、ただいま戻りました」
ノヴァの前に膝まづいたのはブルー。
魔王の檻から脱け出した彼は、一日かけて何とかアズマ国へとたどりついた。
「ブルー。レフィーネはどうした?」
「レフィーネは魔族に体を乗っ取られました……」
「そうか。やはり勇者機関は魔族そのものであったか。そうとなれば話は早い。リンネ、戦士たちを戦いに備えさせろ」
「了解」
リンネは悠々とその一室から立ち去った。
「ブルー。勇者は何人死んだ?」
「分かりませんが……十以上は死んでしまいました」
ブルーは酷く悲しい顔をし、そう言った。
ノヴァは自分がいた時のことを思い出していた。
「そうか。また多くの命が失われたか……」
「ノヴァ様の時代も、魔族によって多くの命が奪われたのですか?」
「ああ。俺の時代も悲惨だったよ。だがもうあんな悲劇は繰り返させたくない。だからこそ、俺はこの悲劇を繰り返さないために戦争を始めた」
「戦争……ですか」
何のための戦争なのか?
そうブルーは疑問に抱いていた。
だがもう動き出した時間は止まることはない。既に秒針は止まらない。
「ブルー。お前も戦いに備えておけ。勇者との戦いは相当な犠牲者を出すことになる」
「はい。分かりました」
ブルーは一礼をして、玉泉洞から立ち去った。
するとブルーと入れ違いに、ローブを深く来た少年が入ってきた。
「誰だ?お前」
そう聞かれ、少年はフードをとった。
「カムイか。何の用だ?」
「はい。勇者と思われる軍勢が、三百メートル先まで来ています」
「もう来たか。カムイ、兵を数名城の前に就かせろ。お前はこの国に来るであろうリーフィアたちを迎えに行け。残りの兵は街の巡回、そして勇者を迎えに行かせろ」
「はい。了解しました」
アズマ国へと近づく勇者たち。それを迎え撃つはかつて勇者機関に在籍していた勇者ノヴァとリンネ。
数々の思惑が交錯する時、大きな戦いが幕を開ける。
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