四十三日目『いつの日かの話』

 リーフィアたち勇者一行はアズマ国の門の前まで来ていた。様子を見ようとリーフィアが一人で前に出て門を叩いた。

 門は開き、その中から一人の男が現れた。


「はじめまして。カムイと申します」

「ご丁寧に。で、後ろの兵は何だ?まるで私たちが来るのを分かっていたようではないか?」

「いえいえ。常にこの国は戦闘態勢は整えていますよ。だって今世界では戦争が起きているのですから」

「なるほど」


 カムイの冷静すぎる対応に、リーフィアは少しばかり警戒していた。


「では隠れている勇者様も城へご案内しましょう」

「やはり分かっていたのだろう」

「いえいえ。オーラで丸分かりですよ」


 カムイにはぶらかされ、真相は分からないまま。

 ロンギヌスたちは魔法によって姿を隠していた。


「インディア。魔法を解除しろ」


 その指示とともに、インディアは魔法を解除した。それとともにロンギヌスたちの姿が露となった。


「では案内しましょう。城でがお待ちしております」

「楽しみだ。その者が誰なのか」


 リーフィアはその者が誰なのか察しているからこそ会うのが待ち遠しくて仕方なかった。

 様々な感情が心の中で入り交じる中、重たい足取りで城の中へと入っていった。


「王よ。ルナ王国より勇者一行を連れて参りました。入ってもよろしいでしょうか?」

「ああ」


 カムイは扉を開けた。

 その部屋には玉座があり、玉座には一人の男が座っていた。


「久しぶりですね。リーフィア先生」

「ノヴァ……」


 生徒と教師の再会。

 それは必ずしも喜ばしいものではなく、緊張感漂う再会であった。


「他の勇者がた。リーフィア先生と二人きりで話がしたい。良いか?」

「分かった。お前ら。出るぞ」


 ロンギヌスはそそくさと帰っていく。その後を追って他の勇者も去っていく。


「カムイ。彼らを客室へ連れていけ」

「分かりました」


 カムイは去っていく勇者たちの先頭に行った。

 二人きりに二人きりになった一室で、ノヴァはリーフィアの目を凝視した。


「その目、魔族にとりつかれていた頃とは大違いですね」

「そうか。あの頃はまだ体を完全に支配されていなかったから、時々操られるだけだったがな」

「そうでしたか。でも災難でしたね。また勇者が死んでしまったではないですか。これもあなたの宿命というやつなのでしょうね」


 リーフィアは死んでいった勇者たちのことを思い出す。


「ノヴァ。お前はなぜ世界を戦争状態にした?」

「果たさなくてはいけないことがあったんですよ」

「果たす?それは一体何だ?」

「昔から思っていたんですよ。どうして世界はこんなにも悲しく、苦しいものなのか。そこで勇者機関にが入り、その後リンネに話を聞かされ、多くのことを理解しました」

「リンネか。あいつお前と一緒にいるのか」

「会いたいですか?」


 ノヴァはまっすぐにリーフィアを見た。


「黙秘しよう。話の続きを聞かせろ」

「急かさないでくださいよ。まあ話しますよ」


 ノヴァはその時の記憶を思い出すようにして、いつも通りのトーンで話す。


「リンネはもとは天使でした。彼女は死に、そしてアリーナという女性に生まれ変わったんです」

「アリーナ?彼女は死んだはずじゃ」

「確かに死にました。ですが彼女は最後にこんなことを魔族にとりつかれていた国王に頼んだんですよ」


 そこへ一人の女性の足音が近づいていた。


「次ここへ来る勇者をあの施設に転入生として入れてください。あの時私はそう頼んだ」


 そこにいたのはリンネであった。

 彼女はまるで自分のことを語るように話している。


「なぜあの時国王にそう頼んだのかは分からない。輪廻転生してノヴァに会えるとは確信していなかった。けれど何となく感じていた。もしかしたら、またノヴァに会えるのではないかと。だから私は、あの時魔王に殺されにいった」

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