天命の勇者
八日目『それでも勇者は死んでいく』
そこはトウロウ村。
今日そこで一人、記念すべき勇者が誕生した。
「父上。母上。いってきます」
「「いってらっしゃい」」
俺は勇者になる。
昔、この村が盗賊に襲われた時、一人の女性がこの村を救ってくれた。この村を救ってくれた彼女は勇者であり、自らをこう名乗った。
「私はリーフィア。いつか世界を魔王から解放する者である」
そう名乗った彼女にいつか会えるのなら、そう名乗った彼女のようなかっこいい背中を見せられるような、そんな優しい勇者に、俺はなりたい。
そんなささやかな思いを胸に、いざルナ王国にある王宮へと足を運ばせる。
「さあて、と。必ず勇者になってやる」
俺は森の中でそう叫び、いざ王宮へと入る。なぜか門番は俺をスルーし、入ってくださいとばかりに王宮の中へと案内していた。何か怪しさを感じるも、俺は勇者になりたいから王宮の中へ行くまでには足を止めなかった。
気づけば、俺は玉座に座る国王の前へ膝をつけていた。
「勇者クリエル。お前はこの先出会う多くの者へ感謝を告げることはできるか?」
「はい」
「そうか。ならば君には短い間ではあるが、我々が君を鍛え上げよう。そして必ず一人前の勇者にしてやる」
俺は下へ下へと土の階段を進み、ようやくついたのは地下なのに空に太陽がある場所。
「ここは一体……」
「君が勇者クリエルかい?」
俺が呆然と立ち尽くしていると、一人の女性が話しかけてきた。その女性を見た瞬間、俺は思った。
「勇者……リーフィア」
彼女の顔は紛れもなくあの時あった勇者リーフィアであった。恩人の顔を見間違えるはずがない。彼女は紛れもなくリーフィアだ。
こんなに簡単に会えてしまうだなんて、最初は思わなかった。
「クリエル。そうか。あの時の子供が、今では大きくなったな」
リーフィアは俺の頭を優しく撫でた。
リーフィアの手は温かく、そして優しいものであった。やはりこんな人が勇者になるのだろうな。
「ところでクリエル、死んでくれ」
それがリーフィアだと、誰が言ったのだろうか。
前にも言っただろ。全ての勇者は死んだのだと。
今日も一人、魔王によって殺された。
魔王樹がそびえ立つその森には、いつものように木が一本増えていた。
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