超絶潔癖症
私は自分で言ってなんだが、潔癖症だ。
自分の身周りにおいてゴミ一つも許さない。私にとって防護服と防護マスクは必需装備だ。常に清浄な空気を吸っていないと落ち着かないからだ。
かれこれ三十年以上、防護服の清潔さも保ちながらこれ一着だ。
会社に通勤する間に、自分の視界に入った全てのゴミを拾う。電車でもバスでもゴミは決して残さない。
会社に着くと私は必ず防護服から着替えず、常に清浄な空気を身体に取り入れる。オフィスに無限に浮かぶ埃が許せないからだ。
本当なら視界にさえ入れたくないが、このような完全装備なら決して私の身体に付着することはないので許す。
自宅に帰宅。自宅の玄関にはクリーンゲートを置き、全身をくまなく消毒したあと、家の隅々を確認しゴミが無いかを確認する。
何もゴミも埃もないと確認したら、防護服に付着した細菌や埃を落とす為に水洗いをしてから乾燥させたあと、紫外線除菌機能付きクローゼットに仕舞う。
この際に使った水は家の排水溝には流さず、外の下水道へ流す。
その後は即座に自分の部屋へ移動し、カーテンを閉めて、空気清浄器を起動し、エアコンは毎日掃除した後に点ける。
後はそこから一歩も動かず布団の中で寝るだけだ。
しかしその日は私の命日だった……。どんなに完璧な除菌と清浄をしても不運は起こるものだ。私は不運だった。
私が布団の中に入って数時間後、何故か私の部屋に蚊が飛んでいた。
私はそれを咄嗟の判断で叩き潰した。
あああああああああああ!!!!
血が! 血が私の手にいいいいい!
でも手を洗ったら排水溝に血が流れて仕舞う! 布団から出ようにも布団に血が着くかも知れない!
私は手が、手が、手が!
汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い。
助けを呼ぶわけにもいかない。友人は必ず私の家を汚すだろう! 駄目だ! 対処法が思いつかない!
うわあああああああ!!
───────────────────────────
『速報です。今朝、A氏(38)の友人が最近音沙汰が無いと家に行った所、鍵もしっかり閉められ、カーテンの閉まった暗い部屋で僅かに空いた隙間からA氏の死体を確認した様です。
友人の話によるとA氏は普段から超絶潔癖症で、今まで一度も家に入れて貰ったことはないとのこと。
警察はA氏の普段行動と性格と家の綺麗さからして本当に誰一人入れていないと断定し、A氏の右手に小さな蚊の死骸が付いていた所を考えて、精神的なショック死だろうと一時的な判断を下しました。
警察は引き続きA氏に関連する人物に事情聴取をするとのことです。
次のニュースです──────』
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