第12話 試合開始と・・・初戦
次の日
「Ladies and Gentlemen.お集まりの皆様長らくお待たせいたしました」
そう切り出したのは盛り上げに定評のあるデン君だ。
予定通り今日から前衛のトーナメントが始まる。
「本日の戦いでベスト4まで決めちゃいます!」
いきなり2回戦するつもりらしい。
ルールは30分間で行動不能になるか時間切れの判定で行う。
フィールドは山、森、湖、砂漠、草原、からランダムに選ばれる。
このフィールドに関しては魔術で一定のダメージもしくは危険攻撃と判断されると場外に放り出され待機している聖職者のもとに行くようだ。
この場所は何十にも魔法陣を重ね、特殊な魔法陣になっているみたいだった。
この学園の良いところはこういった設備が整っている。
王国の部隊も訓練に使う場所で国が魔術で生成し管理しているようだ。
それに遠距離を映し出す魔法に音を拾う魔法が使える者が立ち会ってくれると言うのでそりゃもう、盛り上がるらしい。
俺がいなくても魔術は進化している。
1回戦の面白い組み合わせは【俺とジャック】だけだった。
あとは俺が思う強者がきれいに別れた。逆に言えばどんでん返しがありそうで面白い。
「それでは~1回戦第1試合READY~FIGHT!」
デン君の掛け声で大きなゴングが鳴った。
「いや~始まりましたね。このトーナメントに期待することは何でしょうか解説のメロさん」
(解説者までつけて本格的かっ)
「そうですね。先輩方の能力がよく分かるので皆さん出し切ってほしいと思っております」
解説者メロはノリノリのようだ。
「おぉ~そうきますか。この戦いで得るのは自分が相手を攻略するための情報を引き出せると。なかなかずるい人ですねメロさん」
「いえいえこれが最後ではないですからね。追いかけて抜いていくこれも醍醐味でしょう。そのつもりの人も多いと思います。ですので私からわかる内容に関してはバンバン解説していきたいと思っております」
「そうですか。これは観戦している方も気が抜けない戦いになっていきそうです」
「おお~っとここで攻めに転ずるのは~……」
実況者と解説者それに結構盛り上がる会場。思っていたよりみんな楽しんでるようだった。
(全くこっちは強制参加なのに楽しみやがって……)
俺はまだ乗り気ではなかった。
そうこうしている内に4試合目俺の番が来た。
「仕方ない集中しよう」
フィールドに入る前にジャックがやってきた
「お前の情報は少ないが研究はさせてもらってある。その新しい装備が気になるが問題ないだろう。おれの実力を十分に思い知れ」
(ちょっと怖い…本気だなあいつ)
俺もジャック対策は考えてある。それにジャックには負ける要素は無い。今言っていたこの装備の実戦ってとこだな。
「わぁ~~~~~~~!!!!!!」
今日一番盛り上がる会場
「ジャック行けー!」
ジャックはリーダーだ。それにふさわしい実力もある。それに好戦的とジャックが勝つと思っている者いるくらいだ。
「さて1回戦第4試合、1回戦としてはリーダー同士と一番熱い展開なんじゃないですかね?」
「はい、ジャック選手ですが訓練中は好戦的、頭も切れ、スキを見せないことで、うまいことパーティーをまとめている。といった印象ですね。それに比べルーシュ選手は指示が的確、状況判断や心理的と言った相手が嫌がることが得意な嫌な人です。同じパーティーでしたがあの人はなんにもしません、『そっち言ったぞ、ほれここに敵が集まるぞ、そこに罠張っといて』間違いではないんでしょうが、やる気があるのか無いのかわかりませんでした」
(あいつボロクソ言いやがって)
ただの愚痴を言っているメロをちらっと見る。
ニコニコしていた。
「それでは準備が整いました。1回戦第4回試合『ジャックVSルーシュ』READY~FIGHT!」
フィールドは《森》どっちかって言うとあいつ寄りのフィールドだ。
スタート地点もバラバラでまず敵を探さないといけない。
「ふぅめんどくさい歩いてたら襲ってくるだろ。あいつのことだし」
俺はまっすぐに歩きだした。
5分くらい経った時気配がした。ほんの一瞬だったが俺は感知した。
(まだまだ甘いなぁ)
「後ろ」
そう言うとジャックが後ろから突っ込んできた。
「くっ」
感づかれたと思ってまた姿を消すジャック
「早く来い。不意打ちやスピードが武器だろ?」
ちょっとめんどくさいのは見えないから魔法が打ちにくい。スピードについて行ける魔術で斬る、俺の術はトラップ型に近いからこれが今の課題だ。
パチン
急に指を鳴らした。
キィィィンと刃物同士がぶつかる音がする。
「いいねぇ」
ジャックの武器はナイフだ。
少し攻めに転じる。
パチンパチン
俺は動いていないが的確にジャックのいる方向を攻撃する。
「おおっとジャック選手思っていたより攻められていません、逆に押され始めている? どういったことでしょうメロさん」
「これはルーシュさんの感知範囲が広すぎてジャック選手が突っ込めない状況に陥っていますね。ちょっと警戒のしすぎと言ったとこでしょう。それを逆手に攻めに転じたルーシュさんは流石ですね」
「では勝機は少ない? ということですか?」
「そうではないですが奥の手をもう使わざる負えないといった状況です。それがルーシュ選手の想像を超えれば勝てるのではじゃないでしょうか」
「やはり強いなルーシュ。その理解できない斬撃避けるので精一杯だ」
「姿見せてよ。当たらないです」
(さてどう対応してくる?)
ザァ……
姿を見せてきたジャック
「・・・・・・・・・・」
なにか呪文を唱えたようだ。
その後急加速でこっちに突っ込んでくる。
「真正面なんて通じるわけ無いでしょ」
パチン
俺の前方に斬撃を浴びせる。ジャックを斬った様に見えたが
「ガキィィィン」
真後ろで音がした。
ジャックが真後ろから俺を切りつけていた。
「ほう面白い、《分身》と《高速移動》、更にステルス《透明化》の3重か、分身作れるのは知らなかったよ」
ジャックは分身を囮に後ろから狙っていた。そうなると最初の気配を少し見せたのもわざとだろう。そうすることで俺がジャックの分身があるとは思わないと踏んだからだ。
そういう俺は例の新しい装備でこの攻撃を受け止めていた。
ジャックは驚いたようだが続けて何度も攻撃を繰り出すが、またこの装備に防がれる。
パチン
少し戸惑っているジャックに向けて指を鳴らす。
斬撃がジャックを襲う。
「しまった!」
各所を切られ傷つくジャック、一発でボロボロだ。
「気になる?」
俺は膝をついているジャックに話しかけた
「多分俺を倒すならなるべく早く懐に入るしか無い、訓練中も近づく前に俺は離れてたからね。君た・ち・は思った《打ち合い》それができないのじゃないか? もしくは俺の斬撃は剣を抜いていたら使えないのじゃないか? まぁ外れっちゃ外れだし正解っちゃ正解、だからそのためのこ・れ・」
俺は左手に巻き付くベルトのようなものを指した。こいつは腰のベルトから背中を周り左腕に巻き付いている。それが一定の範囲の攻撃をオートで弾くものだ。素材は《ダニマイト石》これを見たときから興味があった。どの薄さでどこまで強度が出るのか、魔法をかけるとどういった反応を起こすのか。それを考えできたのが《ベンテンディア》。刀の刃のような形状、ある程度の伸縮とムチのようにしなる性質に変化させたこれが一番安定した。こいつにある一定の範囲の攻撃を弾くように魔術をかけ自動防御できるものを作った。
ジャックのスピードこれに付いていければ成功。そのためジャックと戦いたかった。
実際もっと早いのでも対応できると思っていたから心配はしていなかったが不意打ちを食らったことは事実だった。
しかし予想通りの結果に俺は満足した。
「……わけわからんものを」
ジャックは辛そうに言った。
「戦えてよかった?」
パチン
さらに無数の斬撃がジャックを切り刻むそして退場していった。
最後に「くそっ」と聞こえたような気がした。
「ふぅ」
一息ついた。
「終了~~~~~! なんと熱い戦いが予想されたにもかかわらず、一方的! ルーシュ選手強い強すぎる。会場もこの圧倒劇に言葉を失っているぅ」
会場は終わったにもかかわらず静寂だった。
「ルーシュ!!おめでと~~~」
パチパチパチ
と、リリスが声を上げると一気に会場が湧き出した。
俺は手を上げて応えた。
「メロさんこれは予想にしていましたか?」
デン君が解説者メロに聞く
「いえ、いくら強いと言ってもここまで圧倒的とは……あの人歩いて止まってただけですよ? 僕は入学試験の日最後あの人を見ていました。その時強大な気配が、何者も寄せ付けない様なオーラが一瞬でしたが出てたような気がしたんです。それも攻撃するときではなくアラバマ最高顧問を威嚇した時に……これはまだ秘めた力がありそうですね」
(あのボケまたいらん事を)
「と言うことで1回戦第4試合はルーシュ選手の勝ちで~す」
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