大賢者は剣士がしたい

第6話 王子は弱虫・・・そして試験開始 前書き編集

「といった感じだ」

　戻ってきてアラバマと話す。

「その2体の魔物については？」

「わからん見たことはない。それに彼奴等は逃げた。あの後森を一人で見て回ったが俺が封印した樹王はいなかったその変わりその２体に樹王の気配を少し感じたが彼奴等は禍々しかった、魔王の気配のような……魔王が取り込んで力をつけているとか？　その残痕が彼奴等……あくまで仮定の話だがな」

「そうですか……そういうことがあり得るなら他にもこういった事が起こる可能性がありますね。先手を打っておきますよ」

「それともう一個お願いしていた件は？」

　アラバマが続けて言う。

「ああギルドの現状か？　後衛職の多さが気になるな。それにはっきり言って前衛が弱すぎる、Bクラスと言っていたがあれじゃCかDレベルだ。このレベルならAやSの連中も見てみたいくらいだ。それに比べCクラス魔法使い、聖職者、コイツらは魔力だけだとAクラスだ。ここが気になる、いくら多いと言ってもCがAクラスだと上位が異常に強くないか？」

　思ったことをそのまま伝える

「そういう見解ですか、昔に比べ魔力自体は強力にはなっていると思っていいのですね」

「そういうことだ。俺がいた時代にあれほど威力が高い魔法、魔防壁に強化魔法、あれを使えるものは上位者だけだった。まぁ経験が少ない、状況判断や考察、冷静さも足りんがな」

「そういった理由でCクラスってことになっております。魔力は基本的にみんなあんな感じなのです。そこから選ばれたものだけが更に強力になりSクラスへになります。逆に言えばAクラスまでは魔力値で言うとCと変わらないということです」

「まぁ十分だ。前衛はなぜあんなに弱い？」

「前衛に関しましてはSクラスは異常です。私どものマスターの内３人が前衛職ですが後衛職がいなくとも任務をこなせます。それがルーシュ様からみて強いのかは現状不明ですが、それに比べA以下は滞っています。前衛希望者の中でも精進するものがAクラスになってますがいちばん死者が多いクラスにもなります。Bまでは魔力値が足りず後衛になれたなかったものが大半で、さらに王国騎士へ編入していくものが多くどんどん衰退していってます」

「前衛の必要性がわからんってことではなさそうだな。今の時代単に前衛の魅力が感じられないと言ったところか丁度いい前衛職の対応は考えておく、まずは学校から前衛職を増やしていくしか無いな」

「そうですかありがとうございます。あとルーシュ様、私はあなたを賢者と認めます。色々と失礼いたしました」

　あらたまって礼をしてきた。

「構わん疑うことも必要だ。特にお前らの立場ならな」

「もう一つ、連携をもっと学ばせろ、前衛が囮みたいな戦い方でこの先やっていけるか。俺の文献読め」

「申し訳ございません。ギルドのあり方根本的に見直す必要がありそうですね」

「わかってればいいよ」

（そうと今回の件でやっぱあいつ《勇者レオ》みたいに前衛で戦うことが楽しい、それに華がある。おっとこれじゃただの狂人だな）

　少しにやけていた。

「それにしても任務で２日潰れた。明日王子のところに行って少し腕試しでもするかな」

　他にも前衛やるにしても魔法は不便だ。周りを巻き込む下手したら自分が危ない。それに強力なものほど時間がかかる……やっぱ剣かなぁ、けど重いよなあれ、素手は痛いよなぁ。ちょっと試したい魔法あったんだった。色々と考える時間になりそうだ。

　俺は楽しそうに机に向かった。

　翌日早朝から王子ロロの元へ向かう

　トントン

「王子おられるか」

　ガチャッと扉をヴィニーが開ける。

「寝坊助ではなさそうだな」

「ふんっそんなのでこの国の上に立てるか」

　しっかりと着替えまで終わって一服していた。

　時たまに生意気だよなこいつ

「で何用だ？」

　その態度のまま聞いてくる

「明日の試験について腕試しをする。ついてこい」

「ちょっと～　それは無理～」

　また弱虫王子になる。

「何度も無理って言ってるでしょ？　戦うなんて、学校は行く決心はしたよ。もうそれでいいじゃないか？」

「落ちればいいとか思ってないだろうな？」

「……ヴ……そんな事」

　図星か

「まぁいい先に学校でのことを話す」

「これは預言者とも話し合った内容だ」

　昨日の内に預言者とこの先を少し話し合っておいた。

「何？　また嫌なことなんでしょ？」

　もう泣きそうだった

「俺らは身分を隠すためこの前消えた村の生き残りとして学校にはいる。そして学校の寮で生活をする。まず第一関門、Aクラスにはいること。Aクラスだけがこの国の学校で学べる、寮もピカイチ、授業内容も変わってくる、それに俺の近くにいられる」

「待った！　もう無理でしょ？　Aって貴族とか有名な魔法使いの家系がはいるところだよ！　それに寮ってここに帰ってこれないのは嫌、ふかふかのベットしか無理」

（アホなのかお前は王族だろうが）

　それにふかふかって…

「だまれ、それと俺らは友達だ、お互い気を使った行動言動は禁止、特にすがりに来るな、それだけは覚えておけ」

「偉そうに賢者ごときが王子に向かって、まぁ仕方ないそれは許してやろう」

　急にどこからその威勢がでてくるんだ？

「わかったならなお前の実力見せてもらうちょっとついてこい」

　半ば強引に連れ出してきた。

　城内魔法訓練室にて

「王子は索敵、隠密といった後方支援が得意です。けど王にもない炎の魔法が使えます」

　ヴィニーが準備中の王子に変わり説明してくれている

「光でも火でも、なくて炎？」

「はい火力と形状が火上位の炎なのです。それが下級魔法から現れておりますが本人は熱いと言って使いません、実際火傷を負うのです」

「珍しいな天性の上位魔法者か」

　上位魔法者は火は炎、水は氷、土は鋼、風は雷といったように上級魔法でしか使えない属性を下級に付与できるものを言う。俺が先日使った雷も下級だが上位魔法だ。通常の１０倍の威力の下級魔法程度の魔力の消費で上位魔法を使えるという利点がある。実際扱いが難しく使いこなすには時間と実力をそなえないといけない。

　しかしたまに生まれ持って使用できるものもいる、俺もそうだが使いこなせないとロロみたいに反動が大きく使用者が大きく負傷する恐れもある。

「はい、ですので使用を極端に嫌っています」

　ヴィニーは心配そうに見つめている。

「ロロ、入学試験は筆記に魔法力、身体能力で決められる。今回は《闇夜》の件もあり途中編入やギルド員、更には在学生の再試験にてクラス分けを行うらしい。結構な人数が揃う、その中で勝ち上がるにはやはりその炎の魔法が大切だ。使えるか」

　ロロは無理だと言わんばかりに

「絶対に使わない。おれの腕がなくなってもいいのか？　自分の魔法でやられるなんてそんなかっこ悪いことできるか」

「そんなかっこいい魔法を使えるくせに逃げるのか？」

　勇者レオは炎使いだった。歩く場所すべてを燃やし尽くし魔物の死体すら残さなかった。それがまた美しかった。

「いいものをやる。ブレスレットだ、俺が昔使っていたものだが、火属性の攻撃無効できる。それで思っきり自信を持って撃てばいい」

　ロロが目を輝かせて寄ってくる

「さすが賢者様、最初からそういうの出せよなぁ。すげぇアイテム持ってるじゃないか」

　喜んで着けて走っていく

「使うのは明日だけだそ壊れるかもしれないからな」

「いいのですか？　あんな簡単に渡して」

　心配そうに尋ねるヴィニー

「そんな都合のいいアイテムが世の中にあるか。今のは嘘だ。魔力石そういったたぐいのもはあるが使用したら無くなってしまう。純度がいいものほどなくなるのが遅いが効果も下級魔法より小さい、だから純度の良いものは武器とかに取り付け補助的な効果にしか使えない、弓に火を付けるとかそんなんだな」

「それじゃロロ様は……えぇ大変じゃないですか！？」

　慌てて外したほうが良いんじゃないのか詰め寄ってくるヴィニー

「いいんだよ炎魔法を使いこなせる素質はある」

「そ、そうなんですか？」

「王と勇者の血筋だろ？」

　ニコっと笑ってみせる

「もしかしてそれだけ？」

　めっちゃ喜ぶロロを横目に心配そうな表情をするヴィニーだった。

　その後一通り訓練をした。

「それでは明日３人共Aクラス編入を目標に最善を尽くせ」

「３人？」

　ロロとヴィニーが聞く

「伝えてなかったか？　ヴィニーお前もだぞ？」

　急に顔が青ざめるヴィニー

「嘘でしょ！　私なんて召使いみたいなものですよ！」

「そうかヴィニーおれといてくれるのか？　最高だなっ」

「王子もそう言ってるぞ？」

「そんな私なんてたいした能力は……」

「だからお前は今からもう一度特訓だ」

　楽しそうな俺を見るヴィニーがなんとも言えない変な顔をしていた。

　試験当日

「おっしゃ行くぞ！」

　あんなに嫌がっていたロロが元気だ。それに比べ

「すまないなぁ。伝えたつもりしてたから」

　ぽんっとヴィニーの肩を叩く

　夜通し特訓と勉強をさせられ、やつれたヴィニーがトボトボ歩いてくる。

「ヴィニー落ちたら容赦せんぞ！」

　面白そうにロロが言う

「おい、めんどくさいから飛ぶぞ！」

　パチンと指を鳴らすと

　会場……学校についた。

　そこで目にしたのは人、人、人、全世界で１０００は超える学生数を誇る学校RVRそれの再試験と新入学者の試験で１５００は超えている。

　１２歳～２０歳の生徒で年齢に関係なく魔法が使えるものはA~Eクラスの５つに分けられる使えないものは他職業クラスや騎士クラスと言った王国騎士希望のクラスへ行くこととなるみたいだ。もちろん優劣がある。Aクラスだけがこのブリタニア王国の学校で学べるので色々な国からこぞってこの試験に燃えている。

　これに圧巻されたのか

「やっぱ無理……」

　いつもの口癖が出るロロ

　こいつ２重人格じゃないだろうか…

「さっきまでの威勢はどこいったしっかりしろ」

「あら？　ルーシュさんじゃないですか？」

　後ろから声がした。

　振り向くと一昨日の討伐任務の聖職者キキだった。

「これは、先日はお世話になりました。ここにいるってことは？」

「はい参加者です。私は再試験ですけどね」

　20代と思っていたのに若かったのか

「お互い頑張りましょう」

「はい、よろしくお願いいたします」

　ニコッと笑うと歩いていった。

「何だ？　転生4日目にして彼女か？　あん？」

　ロロが睨んでくる。

「そんな訳、たまたま任務が一緒だったんだよ」

　全然納得してない顔をするロロ

　そうこうしている内に

　ジャララァン・チャチャチャチャ～・ラララララン！

　音楽が鳴り響く

「皆さんおまたせしましたね。当学園RVR SCHOOLの特別最高顧問を受けさせていただくことになりました。アリゾナ・アリンゾロフともうします。まぁ誰もが知っているでしょうが」

　いちいちうざいやつだ。

「人数が多いのでさっくりざっくり分けて試験と行きましょうじゃないですか」

　参加者一人ひとりの床が光りだす。

「これで会場に移動します」

　女性のアナウンスが聞こえた。

　パァっと視野が眩しくなって広い部屋に移動させられた。

　俺たち三人は同じ部屋にいるようだ。

　そして監督は……髭、アリゾナだ。

（あいつ考えてるな。王子は下手打ってもAクラスには行きそうだが試験結果が悪いと格好がつかんぞ）

「そこの生意気そうなガキンチョ今日の試験内容をいってみなさい」

　髭が指差したのは俺、いちいちちょっかいかけやがって

「体力、魔力、学力の３つです」

　敬語なのが気に入ったのかフンッと鼻緒鳴らすような態度を取る髭。

「よろしい。では早速体力から」

　パンパンと手を叩くと

　広い部屋にアスレチック的なもの出現した。

「ルールは簡単です。スタートと同時にこの障害物を避けてゴールするだけです。魔法の使用は構いません。特別製で壊れないので思う存分攻撃してください。ただし他者に魔法をかけたり他者を攻撃するのは禁止です」

　急な展開にあたふたする生徒

「ではスタート」