憎まれ役になろうとも
自警団の詰め所は、今日もとても騒がしい。
三階建ての煉瓦作りのビルを取り囲むように群衆が抗議デモをしているのだ。
『子供を返せ!』
『魔女の手先め!』
『魔女にしかるべき罰を』
この抗議は、魔女を捕まえろと子供を拐われた親が起こしていた。しかしどんなに騒がれても自警団は動こうとはしない。
「今日もずいぶん騒がしいですねぇ 」
窓から抗議の様子を眺めていた新人は、コーヒーを片手に同じく空を眺める先輩へ声をかけていた。先輩自警員はため息をコーヒーで流し込みながら肩を竦めていた。
「昨日また子供が消えたらしい。なんでも魔女のお菓子を食べて可笑しくなったとさ」
「おかしいのはあっちの方じゃないですか」
新人も肩をすくめながら、面白くなさそうに抗議を眺めていたがやがて自分のデスクへと戻ってきました。飽きてしまったのでしょう。
「仕方がないさ。どんなに騒がれても俺たちは動きはしない。憎まれ役なら買ってやるさ。」
それが街と、街の子供たちのためだから。
怒りを魔女に向けさせてはならない。
そのために、自警団は憎まれ役になったのです。
それほどまでして、魔女を守りたかったと言う世に……。
事件は起こってしまった。
「お菓子の家が焼かれただって!? 」
知らせを受けた先輩自警団員につられ、新人も急いで現場に向かうと、そこはひどい有り様だった。
可愛らしいお菓子の家の面影はもはやなく焼け焦げた家の中には、二人の焼死体が発見された。
一人は街でも有名な暴れものであるヘンゼル、もう一人は長らく行方不明となっていたグレーテルだった。
グレーテルはバラバラにされていて、歯形から漸く身元がわかるほど、損壊が激しいものでした。
「これはひどいですね……。」
新人はバラバラになったグレーテルの死体の前で手を合わせていると、先輩自警団員は慌ただしく指示を出していた。
「早く魔女と子供達を探し出すんだ! 絶対に見つけ出して保護するのだ!」
団員たちはあわてて辺りの捜索へと向かったのです。
どうしてそんなに慌てているのでしょう?
そもそもどうして、自警団は魔女を捕まえないのでしょうか……?
魔女を保護とは、いったいどうして……?
その謎を突き止めるには、事件の日から遡らないといけません。
あなたがもしも、この謎を知りたいのならば……
この先の過去に、足を踏み入れてください。
果たしてヘンゼルは、魔女を倒した英雄でしょうか?
どうしてグレーテルは、魔女の格好をしていたのでしょう?
消えた子供たちはどこへ……?
さぁ、謎を解く時間です。
すべては、過去に。
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