第438話 やっと……

 

 トラブルは目を見開く。

  

 今時の男子はそっち系の動画などは見ないのかと聞きそうになるが、テオの恥ずかしさと情けなさが混ざる顔を見て、言葉を飲み込んだ。


 思えば、友人といえばノエルしかおらず、しかもノエルはテオが大好きときているわけで、自分からテオが離れて行く情報を教えるはずがない。


 なるほど、キスやバストは想像出来ても、肝心な所は知り様がないと納得した。


 2人は布団の中で見つめ合う。


 テオの強い心臓の鼓動よりも、トラブルの鼓動は早くなって行った。


 トラブルはテオの髪に手を入れて、優しくキスをする。そして、ほんの少し手を添えて手伝った。


 2人は出会ってから長い時間を掛けて、ようやく結ばれた。






 テオはトラブルを抱きしめたまま、苦しそうに目をつぶっていた。


(テオ?)


 テオの汗ばんだ、まだ湯気の上がる背中をポンポンと優しく叩き、そして額に張り付く前髪を上げる。


 テオは微笑み、トラブルの髪を撫でた。


 2人は布団の中で抱き合ったまま、しかし、恥ずかしさで顔を合わせられない。


 しばらくして、テオはトラブルを胸に抱きながら、恐る恐る聞いた。


「ねぇ……イッた?」


(はぁ⁈ あれで、どう、イケと……?)


 トラブルは返事に困るが、ここは正直に言ってはいけないと、遠慮気味に返事をした。


少しだけ。


 テオはガバッと身を起こして顔を見る。


「少し? 少し、イッたの?」


あー、はい……。


「そっか。次はもっと頑張るね!」


余韻よいんも何も、あったものじゃ無いなー……)


 トラブルは苦笑いをしながら、テオを見上げた。


 テオは「大好き!」と、トラブルの額にキスをする。


(女の子みたい。さて、シャワーを浴びに……あれ? パンツはー……ない……)


 トラブルは布団の中をまさぐって下着を探すが見当たらない。


「これ、探してんの?」


 テオは黒い下着を指でつまみ、差し出した。

 

(バカー!)


 バッと下着を奪い取り、ふくれて見せる。


「どうしたの? 探してたんでしょ?」


 テオの純粋無垢な瞳を見て、トラブルは脱力する。


(もう、お子ちゃまなんだから……ん? 同じ事をしてやる)


 トラブルは、テオのパンツを布団から引っ張り出して、顔に差し出した。


「あ!僕の!返して!恥ずかしいよー!いや〜!」


 テオの叫びに、トラブルは大笑いをしながら手を伸ばして、パンツを取らせない。


 2人は裸のまま、パンツの奪い合いでじゃれあった。


「取った! 僕の勝ち!」


 テオは勢いを付けて足を上げ、パンツを履いた。その勢いのまま、ベッドから立ち上がる。


 パジャマを拾い、布団をめくってトラブルの体に掛ける。そのまま、トラブルを抱き上げた。


「トラブル、また、痩せた? 軽くなったんじゃない?」


 テオはバスルームにトラブルを抱えて行き、バスタブに下ろした。


 トラブルはテオのパジャマで前を隠しながら、首を傾げて恋人を見る。


「ん? シャワーを浴びたかったんでしょ? 洗ってあげる」


 トラブルは驚いて手話をした。


1人で入ります。


(まだ、そこまでの関係でない様な?)


「なんで。照れないでよ。深い仲になったんだからさー」


(深いって、何を言ってんだか……)


 トラブルは首を振ってテオを拒否した。


出て行って下さい。


「え! 彼氏に向かってひどいなぁ」


早く。


「本気?」


出てって。


「……ちぇー。分かったよ」


 テオは渋々、バスルームを後にした。


 トラブルはシャワーを勢いよく出す。熱い湯を浴びながら、全身からテオの痕跡を洗い流した。


(んー、少しヒリヒリする……)


 バスタオルで体を拭きながら、替えの下着と服を忘れたと気が付いた。


 バスタオルを体に巻いたまま、テオに見つからない様に、そっと部屋に戻る。


 クローゼットのタンスの中をさぐっていると案の定、テオに見つかった。


「トラブル⁈ どこか、行くの⁈」


行きません。服を忘れました。


「あー、ビックリしたー。僕もシャワーしてイイ?」


はい、どうぞ。


「……いなくならないでね」


はい? ここに、いますよ。


「うん……でも、夢みたいで」


 テオはバスタオル姿のトラブルを、頭の先から足の先まで、何度も視線を往復させる。


恥ずかしいので、早く、シャワーに……


 トラブルが言い掛けた時、テオはトラブルを抱きしめた。


「本当に本当でいなくならないでね? どこにも行っちゃ嫌だよ?」


(まったく、女子なんだから……)


いなくなりません。夕飯の準備をします。


「うん。……ねぇ、これ、もう一度、見てイイ?」


 テオは鼻の下を伸ばして、トラブルのバスタオルの胸元に指を引っ掛けてのぞく。


(だ・か・ら、これって言うなー!)


 トラブルは、テオの頭を思いっきりはたいて、笑いながら背中を押してバスルームに放り込んだ。






【あとがき】

 この話は、なろうで2回ダメ出しをされた、ヌンにとっては曰く付きの話です。

 不適切な性描写で4日ほど公開が禁止されていました。

 もちろん改稿してありますが、カクヨムのほうが厳しいと噂で聞き、ドキドキしております。


 “ここ、マズいんじゃね?” 的に教えて頂けるとメチャクチャ助かります(>人<;)

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