第437話 キスは100点満点


 テオとキスをしながら、ふと、トラブルは部屋が薄暗いのに気が付いた。


(どのくらい、寝ていたんだろう……もう、夕方?)


 テオのキスは止まらない。


 テオの温かい手が胸にのびた時、トラブルは背中をトントンと叩いた。


 しかし、テオは顔を上げ様としない。


 トラブルの鎖骨に音を立ててキスをする。


(待って、テオ。待ってってばー)


 トラブルは背中を叩いて呼ぶが、気付かないのか、テオは動きを止めない。


 トラブルは指をパチンと鳴らした。


「ん、なに?」


 やっと、紅潮した顔を上げる。


 トラブルは、シャワーを浴びたいと、手話をした。


「……ダメ。今の、この1秒は僕のモノだから」


(ダメ⁈ 朝から病院に行ったり、掃除をしたり……バイクにも乗ったし、汗も……)


 トラブルは身をよじって、のがれ様とする。


「ダメ。もう逃さないよ。あとで行かせてあげるから……今はダメ」


(床で⁈ テオって、もっとシチュエーションに、こだわると思っていたけど……どうしよう……このままでイイのかな……)


 トラブルの思いに気が付いたのか、テオはトラブルをヒョイッと抱え上げ、ベッドに向かう。


 宝物を置く様に、そっとベッドに寝かせ、テオはパジャマの前を開けた。甘いキスを繰り返す。


 トラブルは背中に回した手で、柔らかくしなやかな筋肉を撫でる。


(テオ、たくましくなった……)


 テオのとろける様なキスに、湿った吐息を感じた。


(やっぱりキスが上手……本当に初めて? まさからノエルと練習していたりして⁈)


 トラブルは心の中で笑う。洋服から、先程の悪夢の汗の臭いがした。


(やっぱり、シャワーを浴びたいな……私、汗臭いよ)


 トラブルは手話をするが、テオはキスに夢中だった。


 テオは、動くトラブルの手首をつかみ、顔の横に退けさせる。


 トラブルの両手をベッドに張り付けにして、テオは愛する人をまじまじと見下ろした。


「トラブル……綺麗だ……本当に綺麗だよ」


(は、恥ずかしい……もっと、ガツガツくると思ったのに……恥ずかしいよー)


 トラブルは恥ずかしさに肩をよじって、手首を外そうとするが、テオは離さなかった。

 

(もう! 手を押さえないでって言ったのに……これじゃあ、口を塞がれているのと同じ……)

(第2章第215話参照)


 トラブルはつかまれている手首が痛くなり、眉間にシワを寄せ、力を入れてテオの手から逃げようとした。


「トラブル? ごめんね、もっと優しくするから」


 テオはトラブルを抱きしめた。その柔らかさに夢中になる。

 

「すっごい、柔らかくて温かいよ。すごい、これ、気持ちイイね」


 テオは決して大きくはない胸に手を置く。


 トラブルは(だから、これって言うなー)と、思いながらも抵抗出来ずにいた。


 テオと口づけを交わし続ける。


 お互いに湿り気を帯びた鼻息が荒くなり、トラブルが自分の汗臭さが気にならなくなって来た時、ふと、テオの動きが止まった。


 目をキョロキョロとさせながら「ごめん」と誤る。


「あ、あの、ここから、どうすればイイのか……分からないんだ。その……教えてくれる?」

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