第371話 大男の登場
小男はトラブルを見下ろす。
「お前、何者だ? 普通、警察手帳見せられたら引くだろ」
体に似合わず大きな靴で、トラブルの腹を踏みつける。
「おい、『あー』とか『うー』とか言わねえって、頭が足りないのか? ほれ、言ってみろ。何とか言ってみろよ」
小男は踏みつけた足に体重を乗せる。
トラブルは両手で男の足を
「おもしれぇ……その顔、いつまで持つかな?」
小男はトラブルから足を上げて、勢いをつけて振り下ろした。
トラブルは体を回転させて、その足を避ける。
小男の足は地面を踏みつけていた。
「ハッ! あんた本当に何者だよ!」
小男は、新しいオモチャを買って
「大人しく、よっ! してりゃあ、よっ! 痛い目にも、よっ! 合わなかったのに、よっ! バカな女だ、よっ!」
立ち上がるタイミングを失ったトラブルは頭を抱え、背中を丸めて蹴られ続ける。
口の中の血の味が濃くなり、視界がボヤけて来た時、小男が蹴りを止めた。
背中から『先輩』の警察手帳を抜き取る。
「お前……いつ、
小男はトラブルの髪を無造作に
しかし、いつまで経っても声を
「お前はいったい……何なんだよ!」
「ばっ! 化け物!」
小男はトラブルの頭に
トラブルは自分が死んだと思った。
(痛くない……前もそうだったな……)
意識が薄れる中、小男の体が吹き飛んだ気がした。
(ん、まだ、生きている……?)
トラブルは小男が飛んで行った先を見た。小男は地面に仰向けにのびている。
誰かが
「ミン・ジウさんで、お間違いありませんか?」
その声の主は、地面に横たわるトラブルには天にも届く大男に見えた。
トラブルは
「遅くなり申し訳ありません。自分は陸軍第2師団、
名乗った大男は、小男の両手を結束バンドで縛り上げた。
そして、トラブルの視界から消えた。
しばらくして、まだ気を失っている『先輩』を抱えて戻って来た。
小男の横に投げ捨てる。『先輩』の腕も結束バンドで縛られていた。
大男は再び、トラブルの視界に現れた。
トラブルは動かない首でかすかに
大男は女の子のバッグの中を探り、女の子自身のスマホで救急車を呼んだ。そして、スマホをバッグの中に戻す。
次に小男のポケットを探り、小男と『先輩』の警察手帳を広げて地面に置く。
次にトラブルのリュックからスマホを取り出す。しかし、トラブルのスマホはモバイルバッテリーに繋がれたままになっていた。
「なるほど。バッテリーが切れて、あなたの位置情報が消えたのですね」
トラブルのスマホで警察手帳の写真を撮り、誰かに送信している。
トラブルは大男を見上げた。
(第2師団……別名、
「お待たせ致しました。大変申し訳ありませんが、自分は救急車が来る前に立ち去らなくてはなりません。失礼します」
大男は、そう言ってトラブルを軽々と抱き上げた。
トラブルは手足をバタつかせ抵抗する。しかし、大男の腕は、びくともしない。
「ノラ猫の様と聞いていましたが、その通りですね。申し訳ありませんが保護しますのでご協力下さい」
トラブルは抵抗を止め、大人しく運ばれる。
チョ・ガンジンが泊まるモーテルの前を通り過ぎると1台のSUVが停まっていた。
チョー・ミンジュンはトラブルを後部座席に寝かせ、自分は体を小さくして運転席座り、電話を掛けた。
「はい。発見、保護致しました。はい、その2人に絡まれた模様です。はい、行動抑制済みです。女性1名の救急搬送を依頼しました。いえ、命には別状ありません。了解」
チョー・ミンジュンは電話を切って、後部座席のトラブルを見下ろす。
「自分は手話を
(大佐? 引退した大佐に何の関係が……?『元』ご令嬢だけどね……)
トラブルは指を1本立てる。
「失礼致しました。友人の頼みとはいえ、自分の行動理由をハッキリとさせたかったので」
チョー・ミンジュンは車のエンジンを掛ける。
「ご自宅へ送る様にと指示を受けておりますが、職場の方が医療品が揃っているのではありませんか? 傷の手当てが必要だと思われますが」
(職場って……こいつ、私の医務室を知っているのか……なんで職場……会社……あ、ハン・ジョンファンって代表じゃん!)
代表の息のかかった者だと理解し、脱力する。
「ご自宅でよろしいですか?」
トラブルは指を1本立てる。
「了解致しました」
チョー・ミンジュンは車を走らせながら、自分がなぜ、あの場所に現れたのか説明をした。
「ハン・ジョンファン氏は、あなたの位置情報が一時消えた為、確認と救助を目的として自分に依頼して来ました。確認の為に信号の消えた場所に自分が到着をした時は、すでにあなたの姿はありませんでした」
(帰ろうと思って移動していたから……)
「周辺を捜索し、あなたを発見した次第であります」
(よく、私だと分かったな……現役の職業軍人……)
トラブルは代表と大男の関係を聞き出そうと決心した。
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