第370話 早く帰ればよかった
トラブルの全身の毛が総立つ。
「何? 怖くて声も出ないのかな? 綺麗なお姉さんは気持ちイイ事したら、どんな声を出すのかなぁ? 聞かせて欲しいな〜」
トラブルは自分の手首を
「ガッ! ……このアマー……!」
『先輩』は腕を押さえながら、すぐに立ち上がった。
トラブルは体勢を低くして、立ち上がった『先輩』のスネを蹴る。痛みで腰が曲がり、頭が低くなった所で顎に膝蹴りを入れた。
「!」
『先輩』は声にならない声を出しながら、顎を押さえて地面を転がる。
「先輩!」
もう1人の背の低い男が『先輩』に駆け寄り、そしてトラブルに血走った目を向けた。
「この野郎……」
レスリングの様に低く構える。
(……自分より大きな相手の護身術は習ったけれど、小さい相手には、どう対処すればいいんだ⁈ )
トラブルが
トラブルは正面から体当たりを受け、電柱に叩き付けられる。
トラブルが暴れても男の力は緩まない。
「イイね〜。
男は背後からトラブルを
トラブルは冷静に一呼吸おいて、両肘を持ち上げた。
男の腕が上がり、トラブルとの間に隙間が出来る。トラブルは素早くしゃがみ込み、男の片足を持って立ち上がった。
男の足は空中を蹴り、ドシンと地面に背中で着地する。
男2人が地面で痛みに耐えている間に、トラブルは女の子を助け起こそうとする。
しかし、女の子は意識を失っていた。
(やばっ、起きて!)
トラブルは女の子を揺するが、反応がない。
その間に『先輩』は立ち上がりトラブルに拍手を送る。
「イヤー、お姉さん、護身術習ってんの? 油断しちゃったよー。その子、死んじゃったかな? 死体とヤル趣味はないんでね。お姉さんに、その子の分まで頑張って
トラブルは女の子の前に立ちはだかる。
「威勢がイイねー。でもね、護身術は逃げる為のモノでしよう。俺達の逮捕術に
『先輩』は声を上げて笑う。
(逮捕術……こいつら本物の警官か。どうする……一旦、引いて通報するか? でも、その間に、この子を連れ去られたら探しようがない……どうすれば……)
トラブルは『先輩』から目を離さず、膝を付いて、気を失っている女の子の脈を触る。
(弱い……このままでは本当に心停止する……)
「へー、この状況でも人の事を考えられるんだ。君、凄いねー。仲間にしてあげようか?」
『先輩』はヘラヘラと笑う。
「その女、殺してやる!」
背の低い男が腰をさすりながら叫んだ。トラブルに向かい、また突進して来る。
トラブルは地面に付いた膝を軸にして『先輩』を足払いした。
『先輩』は倒れ、突進する男の進路を塞ぐ。
「先輩! 大丈夫っすか!」
男2人が立ち上がる前に、トラブルは女の子から離れた。
(『先輩』だけなら勝てる。しかし、小男の方は無理だ。2人を離す事が出来れば、まだ、勝算はあるかも知れないが……とにかく、彼女から気を
トラブルは男達と間合いを見ながら、女の子から少しづつ離れる。
(体が温まって来た。走るか……スマホはリュックの中……小男を
トラブルは小男の様に体勢を低くして『先輩』に向かって走り出す。
「ハッ! お姉さん! 気は確かか⁈」
『先輩』はトラブルを捕まえようと両腕を広げた。
トラブルは『先輩』の股下にラグビー選手の様にタックルをして、しがみつく。
そして、前進しながら、しがみついた手をガッチリと組み『先輩』の重心の下に入り込み、全身を使って持ち上げた。
背の高い『先輩』は空中でバランスを失い、前に1回転して落下する。
頭から落ちた『先輩』は白目を
トラブルは、その勢いのままリュックを拾う。
驚いて固まる小男に向き合いながら、タックルした時に『先輩』の尻のポケットから抜き取った警察手帳を、自分のズボンと背中の間に挟んで隠した。
(これを何とか隠し通せば、こいつ等を告発する事が出来る。あと、1人……)
トラブルは女の子と反対方向に走り出す。走りながらリュックに手を入れ、スマホを探す。
突然、肩を
(しまった! こいつ! 早っ!)
トラブルが振り向いた瞬間、顔面に激痛が走る。
殴られた痛みと、地面に全身を打ちつけた痛みで息が止まった。
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