第192話 背徳的ラーメン
「トラブル……」
テオは愛する人に手を伸ばすが、テオの腹がグーっと、空腹を訴えた。
「う、こんな時に……」
トラブルは笑いながら、シャワーを浴びて来て下さいと、手話をする。
「はーい」
テオは素直に従った。
テオがシャワーを浴びている間に、トラブルは夜食になってしまった夕飯の支度をする。
テオは大急ぎでシャワーを済ませた。
早いですね。
「うん、早くトラブルに会いたくて」
トラブルは笑いながら、ラーメンを丼によそう。
テオはトラブルの前に回り込み、チュッと口づけをした。
トラブルは微笑みながらテオを見上げる。
もう、1回と、テオが顔を近づけると、また、テオの腹が大きな音を立てて食事の
「あー、もうっ」
テオは自分の腹を押さえる。
トラブルはテオに丼を渡し、自分の分もテーブルに運んだ。向かい合い、食べ始める。
「夜中のラーメンって、
(背徳的?)
トラブルが首を傾げると、テオは腰を上げてテーブルに乗り出し、トラブルも顔を差し出してキスをした。
そして、ラーメンを一口食べる。
「うん、トラブル味のラーメンは背徳的です」
人の道に反していますか?
「え、背徳的って、そういう意味なの? なんか、分かんないけど、美味しいからいいよね」
トラブルは苦笑いをしながらラーメンを食べすすめ、ご馳走さまと手を合わせて丼を洗い出す。
「おかわりないの?」
テオは鍋を
これ以上、食べてはダメです。
「はーい。じゃあ、トラブルを食べる」
テオは皿を洗うトラブルを後ろから抱きしめて、耳にキスをする。
トラブルは、くすぐったそうに肩を上げて耳を守った。
今度は無防備になった反対側の首筋にチュッと音を立ててキスをした。
トラブルは笑いながらも手を止めず、洗い物を続ける。
テオはトラブルの顔を横に向けさせ「あーん」と、唇に喰らいつく。
トラブルは背後からテオに抱かれたまま、不自然な姿勢で身を任せる。
テオの鼻息が荒くなって来た。
両手でトラブルの体を
トラブルはテオに唇を奪われたまま、水道に手を伸ばして泡を洗い流した。
テオの腕の中で体の向きを変え、見つめ合う。
テオはトラブルの髪に手を入れ、もう一度、唇を……と、トラブルは濡れた手でテオの顔にピッと、水を飛ばした。
「う、冷た……何するのさ」
トラブルはテオの顔に水を飛ばしながら手話をする。
これ以上はダメです。もうすぐ、皆が帰って来ます。
「いや、だから、急ごうよ」
最低ー。それに私は今、仕事中です。
「そんな〜」
テオの情けない声と同時に、ドアチャイムが鳴った。
ジョンが玄関の靴を見て「テオが帰って来てるー!」と、駆け込んで来る。
「テオー!」
ジョンは両手を広げテオに駆け寄る。テオもジョンを受け止めようと笑顔で腕を広げた。
ジョンがテオの手前でラーメンの匂いに気が付き、急ブレーキを掛けて空っぽの鍋を
テオの両腕は、虚しく空中でハグをした。
「入院には、ならなかったのですね」
ゼノの言葉に、テオは「ご迷惑をお掛けしました」と、姿勢を正して頭を下げる。
「テオずるい!ラーメン食べた! 僕、シメのラーメン我慢したのに!」
「その前に散々食っただろ」
「ジョンは食べすぎだよ」
ノエルは笑いながら、幼馴染にハグをする。
「テオは、大丈夫なの?」
ノエルはトラブルに聞く。セスもトラブルに注目した。
はい。検査は問題ありませんでした。
「いち……何?」
テオは通訳出来ず、セスを振り返る。
「一過性。一時的って事だ」
「そうかー、良かったよテオー。明日も休みな、ね?」
ノエルはテオの肩を抱きながら言うが、テオは「明日はやる。迷惑を掛けてごめんなさい」と、皆に頭を下げる。
「迷惑ではありませんよ。誰でも体調を崩す時はありますからね」
「うん、ゼノ、ありがとう……あの、セス、少し話がしたいんだけど……」
鍋に水を張っていたトラブルは手を止めて振り向く。
「あ、ああ。俺の部屋に行くか?」
セスとテオは、メンバーとトラブルを残してセスの部屋に消えて行った。
トラブルは不安そうに、その背中を見送る。
ノエル達の視線に気が付き、不安を振り払うように力を入れて鍋を洗う。
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