第178話 ダンスレッスン
MV撮影に向けて、ダンスレッスンが始まった。
振付師は3人の背筋にため息を
トラブルは、はいはいと、気のない返事をして、メンバー達の体重測定を続けていた。
無制限な食生活をしていたメンバー達は、この3日間でそれぞれ2キロ前後落としていた。
トラブルはノエルの肩幅が思いのほか広い事に気がついた。だから、すぐに逆三角形になるのは良いのだが、鍛えすぎるとゴツゴツとした野獣の様になってしまう。
トラブルは3人に筋トレを禁止した。
ダンスレッスンに顔を出し、練習室の隅であぐらをかきながら、メンバー達の動きを見守る。
テオはトラブルと話が出来ていなかった。
直接話しをしたいが、いかんせん時間がない。
ラインで伝えようかと考えたが、トラブルがまた1人で泣いてしまうかもと思うと、それも
すぐそこにいるのに、気軽に目を合わす事も話す事も出来ない。
もどかしい気持ちを隠すようにテオはレッスンに集中した。
「よ、お疲れさん」
代表が顔を出した。手で、続けてと、合図をする。
代表はトラブルに何か耳打ちした。トラブルは
テオの目がトラブルを追い、動きが止まる。
気付いたノエルが振付師にトイレ休憩を求め、小休憩になった。
「お腹空いたよー」
例によってジョンが大の字に横になる。
「そうですねぇ」
ゼノは皆に水を配りながら隣に座った。
「トラブルはどこに……」
「代表と一緒だから、仕事だよ」
ノエルはフォローを入れるがテオの顔は晴れない。そんなテオを見たゼノがセスに助けを求めた。
「セス、トラブルはどこに行ったと思いますか?」
「知るか」
ゼノがセスの頭をパシッと叩く。
「てっ! 衣装の打合せかなんかだろ!」
「始めから、そう言えば良いのですよ。ね、テオ、トラブルは我々と仕事をしていますよ」
「うん、ありがとう、ゼノ……」
「トラブルは日本行きを、まだ決めてないの? そろそろ、航空券とかホテルの手配とかの時期じゃない?」
ノエルがテオの顔を覗き込みながら聞く。
「うん。でも、僕達話せてないんだよ。なんだか、前よりも周りの目が気になって……」
「テオは、トラブルに来て欲しいんでしょ?」
「うん……ううん」
「どっち?」
「うーん、ううん」
「分かんないよ!」
「僕も分かんないよ! トラブルと2週間も一緒にいられたら幸せだけど、一緒にいたいけど、だけど……」
「んんっ!」
ゼノが咳払いをして会話を止める。
振付の先生が入って来て荷物からタオルを取り、すぐに出て行った。
「……ほら、こんな状況で2週間も隠し通せる自信がないよ。トラブルとファンの子が倒れていたら、僕、トラブルを助けてしまう……」
「テオ」
ノエルが
一方のトラブルは、衣装を付けたマネキンの背中を見ながらニヤついていた。
代表は、
「お前は変態か」
トラブルは代表に中指を立て、そして手話で言う。
「はっ! そんな変態目線で見るファンがいるか!」
手話は続く。
「そうなのか? 確かに年齢層は広いが」
代表はトラブルの手話を見ながら、スタイリスト達に聞く。
「どう思う?」
「どうと、言われましても……」
困惑するスタイリスト達。
トラブルは呆れた顔で代表に、バカと、手話をする。
「バカとはなんだ、バカとは!」
通訳しないと、答えようがないでしょう。
「ああ、そうか。すまん。えーと、こいつが言うにはー……」
代表はトラブルの言葉を要約して伝える。
ファンは少し見える位の方がもっと見たくなる。親子連れもいる。子供が見ても良いと親が許せる程度、かつ、女性の想像力をかき立てる衣装。男性からは
「この衣装では、露出が多すぎますか?」
スタイリストは、プロデューサーに聞く。
「うーん、動きに合わせてチラチラと見える方が曲のコンセプトに合っていますね」
「そんな! 素晴らしい背筋を全面に押し出しましょうよ!」
振付師は力説するが、代表とプロデューサーは腕組みをしたまま考え込んでいる。
トラブルが代表に手話をした。
「ん? ああ、あるぞ」
代表は自分のスマホで新曲を流す。
トラブルは椅子をずらし、空いたスペースに立って新曲に合わせてイントロのダンスを始めた。
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