第124話 行って来ますのキス
カーテンの隙間から朝日がテオの顔を照らす。
しばらく床とソファーの隙間に視線を泳がせ、くるりと反対へ寝返った。
目に入るのは自分の枕とトラブルが枕にしていたクッション。
(トラブル……?)
「トラブル!」
テオは飛び起きて見回すがトラブルの姿はない。
時計を見る。
午前8時。
(夢⁈ )
「テオ、おはよー」
振り向くとジョンがトイレに行く所だった。
「お、おはよ」
(抱きしめて寝たと思ったのに、やっぱり夢だった…… )
テオが放心していると、トイレから出て来たジョンが「ここで寝たの?」と、呆れてみせた。
「うん、そうみたい…… 」
「トラブルは帰ったの? あ、リュックあるか」
「えっ!」
ソファーの横にトラブルの黒いリュックが置かれていた。
(夢じゃなかった……)
その時、玄関が開く音がした。
トラブルが汗を拭きながら帰って来た。
「どこに行っていたの?」
トラブルはジョンの質問よりも、体調を気にかける。
苦しくはないですか?
「苦しいって聞いたの?」
「苦しくないよー。 で、どこに行っていたの?」
首を傾げるジョンに少しゆっくりと手話を見せる。
ランニングして来ました。シャワーを借りますね。
寝ぼけ
ジョンはそそくさと買い物袋を
「美味しそ〜。オレンジとリンゴとバナナ!」
果物を取り出して並べた。そして、バナナを
「食べていいの?」
テオは聞くが、ジョンはもぐもぐしながら「分かんない」と、飲み込んだ。
セスが起きて来た。
「セス、おはよー」
「ん」
一応返事をして、バスルームへ向かう。
「あ、ああー、今、トラブルがシャワーを浴びてるから」
テオが後ろから声をかける。
「ん。
「いや、いや、ダメだって!」
セスの冗談なのか分からない言い方にテオは慌てて追いかけて行く。
セスは洗面所で歯を磨き始めていた。
テオはトラブルのシャワーの音よりも小声で「
「バカっ。誰が
セスは歯磨きを終わらせ、顔を洗う。
シャワーの音が止まりドアが開いた。
セスが振り向く。テオは振り向かず、セスの視線を
「ほんと、下品な女だな」
セスは頭を振ってリビングへ出て行った。
テオが振り向くと、風呂場から顔を出すトラブルが中指を立てている。
「ごめんなさい!」
テオも慌ててリビングへ逃げた。
キッチンでは「これ、食べていいのか?」と、セスが果物を指差していた。
ジョンは「分かんない」と、言いながら、2本目のバナナを頬張った。
「おはよう。皆んな、早いねー」
ノエルも起きて来た。洗面所に向かうノエルをテオが止める。
「なんで? トイレに行くだけだよ」
「今はダメです!」
「漏れちゃうよ〜」
「ダメー!」
ノエルとテオが揉み合っている間に、いつの間にか起きてきたゼノが2人の後ろを通り、洗面所に入って行った。
「わっ、トラブル! すみません!」
ゼノの声で気が付いたテオが駆け込もうとすると、走り出て来たゼノと正面衝突した。
「いててー!」
床に座り込む2人。
ノエルが「大丈夫?」と、テオを助け起こす。ゼノはトラブルが助け起こした。
大丈夫ですか? おはようございます。
「おはようございます。失礼しました」
頭を下げるゼノに、いえいえと、手を振る。
トラブルはキッチンに立ち、グラスに氷を入れた。
オレンジを絞り、冷えたグラスいっぱいにオレンジジュースを作り、一気に飲み干した。
「美味しそう! 僕も作る!」
ジョンがグラスを取り出すが、トラブルは、採血前に甘い物を
トラブルは昨夜の残りを温めて朝食の準備を始めた。
「トラブル、どこを走って来たの?」
テオが聞く。
「僕も行きたかったー」
ジョンが口を尖らす。
「お前が走ってたら、ファンが1000人位ついて来るぞ」
セスに
毎朝の習慣です。さ、朝ご飯です。
メンバー達はテーブルに着き、いただきますと、手を合わせる。
「トラブルも一緒に食べなよ」
テオが誘うが、トラブルはオレンジジュースを飲み干したグラスを振り見せる。
「それだけ?」
「本当にいろいろストイックですね」
ゼノは妙な感心をしてみせる。
トラブルが空いた皿を洗っていると、セスは自分の皿を運びながら「俺のパソコン、触ったか?」と、目を合わせずに聞いた。
トラブルは、シャットダウンしておきましたと、答える。
「ふーん」
セスはそう言って、それ以上聞かなかった。
私は先に出勤します。あと、30分ほどでマネージャーが迎えに来るので準備をして下さい。
「一緒に行かないの?」
テオが玄関まで見送る。
レントゲン車が来る前に準備があります。
「そうか。じゃ、またね」
テオは笑顔で言う。
トラブルはテオの頰にチュッとキスをして出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます