第120話 ノエルの色仕掛け
ノエルの部屋のドアを後ろ手に閉め、トラブルは
マッサージのタオルを持ち、横になって下さいと、ジェスチャーで言った。
ノエルは布団をめくり、うつ伏せで横になる。
トラブルはベッドに腰かけてタオルの上から肩のマッサージを始める。
張りのある僧帽筋を少しずつほぐしていると、ふいにノエルが仰向けになった。そして、トラブルの顔をじっと見上げる。
トラブルは手を止めて「?」と顔を傾けて見下ろした。
「ねぇ、トラブル。僕はテオの事、大好きなんだよ。幼稚園で始めてテオを見た時、何て可愛い子だと思ったんだ。テオのためにイジメっ子にも立ち向かったし、雨の日に一つの傘で帰れる事が嬉しかった。初恋だったのかも…… 。でね、今、テオにソックリな子が僕のベッドにいるんだけど、どう思えばいいと思う?」
ノエルは髪をかきあげ、流し目でトラブルを見る。
トラブルはノエルの机から紙とペンを取り、筆談をした。
『私はテオではありません』
「分かってるよ。でも、テオが女の子だったら良かったのにって中学の頃は思ってたんだ。で、女の子のテオが僕の寝室で僕とベッドの上にいる。こんなチャンスないでしょ?」
『あなたはテオが悲しむ事は絶対にしない。今、リビングで待っているテオの気持ちも手に取るように分かっているはずです。何が目的か知りませんが時間の無駄です。本題を言って下さい』
「ちぇー、色仕掛けも通じないのか。もう少し動揺してくれると思ったのに。僕、演技の才能ないのかなー」
『充分、色っぽい僧帽筋です』
「筋肉を褒められても嬉しくないよ。ねえ、トラブルは仕事でイケメンの先生と働いたり、男性患者さんを診察したりするよね? 今日みたいに僕達の世話をしたり。テオは今すごく
『私達の交際に反対なのですね?』
「反対じゃなくて心配なんだよ。今、少しでもトラブルが僕の色仕掛けに反応したら、テオに言ってトラブルと付き合うのを止めさせようと思ってたんだ。あー、これは、心配より反対しているのか…… 」
『テオはおそらく私が初恋ですよね?』
「うん、そうだよ」
『失恋したら、更にいい男になりますよね』
「うん、まあ、立ち直れれば…… 」
『でも、テオと私はまだ何も始まっていません。このまま終わってしまったらテオはいい男になれないし、私も成長する事はありません。もし、別れる事になっても、必ずテオがいい男になるように別れます。それは、約束します』
「……うん、そうか。信じるよ」
『ありがとう。早く戻らないとテオの気がおかしくなってしまうかも』
「そうだね」
ノエルはうつ伏せになりトラブルのマッサージを受ける。
すーっと、寝入って行った。
トラブルがリビングに戻ると、案の定テオが
「遅かったね」
ノエルと話をしていました。さ、ゼノ、歯磨きは終わってますか?
「はい、準備OKです」と、ゼノ。
「俺も寝るわ」
セスは自分の部屋に行った。
テオは1人、リビングでソファーに寝転がって天井を見て待つ。
ゼノはトラブルのマッサージを受けながら「ノエルはテオとトラブルの事、反対してませんでした? ノエルからテオが離れるのは良い事だと思うのですよ。だから、応援していますよ……」
ゼノもすぐに寝入った。
トラブルは手首を回しながらリビングに戻る。
「疲れたでしょ」
トラブルは、大丈夫ですと、笑顔を見せる。
さ、テオも寝ましょう。
「僕、さっき少し寝ちゃったから全然眠たくないよ」
トラブルはテオの手を引きながら、この子は寝付きが悪いから時間がかかるだろうなと思う。
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