第71話 トラブルの電話番号
メンバー達は遅い昼食を食べていた。
昨夜の二次会で飲み過ぎ、二日酔いに苦しんでいた。
「う〜、アワビのお粥が食べたい〜」
ノエルがテーブルに頭を乗せたまま
「そんなもの、作れるかっ」
キッチンからセスが皿を洗いながら叫んだ。
「セス、お酒強すぎだよー」
青い顔のテオが胸をさすりながら首を振る。
「僕よりも飲んでたはずなのに何で動けるの〜」
ノエルは重い頭を上げる事が出来ない。
「鍛え方が違うからな」
ほらっと、ノエルに水を投げて渡す。
「セスの
飲んべえだと自覚するゼノはケロリとしていた。
「未成年じゃ〜ん。違法じゃ〜ん。逮捕だ〜。水おかわり〜」
「ノエルが二日酔いなんて珍しいですね」
「テオとトラブルのせいだよ〜」
昨夜はトラブルの話で盛り上がった。
普段、あまり飲まないテオが飲み、1年前の忘年会のダンス(第1章 第25話参照)を踊り出す。
しかし、上手くいかない。
「だから、全員でやらないと」と、ノエルが説明しながらメンバー達を動かして行く。
「違う、違う。そこで左・右。もっと早く。こう、戻るんだよー」
お酒片手に踊りながら歌いながら笑いながら
スタッフにのせられて、さらに飲む……
「途中から記憶がないよ」
テオはノエルから水を奪い取る。
「
ノエルは水を奪い返す。
「僕も〜」
ソファーの向こうからジョンの弱々しい声がした。
「なんで、お前が二日酔いなんだ?」
セスがソファーの背を
「セスが飲ませたんじゃないか〜」
「飲ませてない!
「あ、自分も舐めさせました」と、ゼノが手を挙げた。
「僕も」
「僕も。味見したいって言うからさー」
テオとノエルも手を挙げる。
「味見、1000回位した〜」
ジョンは白い顔でニヤリと笑う。
「バカかっ。子供が飲酒するなよ!」
「セスを見習ってみました〜」
「俺は始めから強いんだっ……おい、ジョン、顔色が悪いぞ?」
「うう〜〜」
皆がソファーを
「水、水」
ゼノが慌てて水を渡す。
「まて、水じゃ気持ち悪くなるぞ」
セスがスポーツ飲料と取り変えた。ジョンは一気に飲み干す。
「う〜。五臓六腑に染み渡る〜」
「そんな言葉は知ってるんだな」
しばらくしてジョンの顔に赤みが戻って来た。
「ほら、腹に何か入れないと」
セスが粥を用意した。
「ありがと〜、お母さん」
「誰がお母さんだっ」
「お母さん、僕もおかわり」
「テオっ、調子にのるな!」
ゼノは呆れながらジョンの隣に座る。
「大丈夫ですか? 頭痛は? 吐き気は? 治らないならトラブルに
ノエルが思い出す。
「あ、そうか、今日から出勤してるんだ。テオ、会いに行ってみようよ」
「え、でも……忙しいかもしれないし」
ぐったりとするジョンも含め、その言葉に全員が驚く。テオが遠慮するなんて……恋に臆病なタイプでしたか。
セスがそんなテオの気持ちを
「テオ、ジョンの診察がてら、トラブルに会いに行って来い」
「でも……」
「ナース服着てるかもだぞ?」
「真面目な顔して変な事言わないで下さい」
「それは、私も見たいです」
「ゼノまで!」
「ピンクがいいなぁ〜」
「ジョン!」
「ミニスカートかもよー」
「ノエルまで、やめてよー!」
ふくれるテオに大笑いの4人。
「んー、いや。トラブルのミニスカートは想像出来ないですね」と、ゼノは顎に手をやる。
「ニューハーフみたいな?」
「見たくないな」
「それ、普通に悪口だよね」
ノエルはジョンとセスを指す。
「もー! 分かったよ! 行けばいいんでしょ!」
テオは観念して立ち上がる。
イェーイ!と、ハイタッチする4人。
ゼノの運転で宿舎を出た。
「結局、皆んな来るんじゃん」と、テオは、まだ、ふくれている。
「まあ、まあ。皆、トラブルに会いたいんですよ」
「ジョンと2人で行かすわけがないだろ」
「ジョン、
ノエルが心配して言う。
「うい」と、弱々しく返事をして3列目シートで横になるジョン。
「私の車で吐いたら、吐き返しますよ!」
「ゼノー、意味わかんないんだけどー」
ノエルが髪をかき上げる。
皆で笑い合っている間に、会社に到着した。
「ほら、トラブルのバイクが止まっていますよ」
ゼノはバイクの近くに駐車した。
照明スタッフがバイクのエンジンをかけている。メンバー達を見て驚くが挨拶を交わし、バイクの調子をみて欲しいと頼まれたと説明をした。
「調子が悪いのですか?」
「いえ、1度、フルメンテナンスしたみたいで問題はありませんね。トラブルだったら医務室にいると思いますよ」
メンバー達は医務室に向かう。医務室のドアに貼り紙がしてあった。
『外出中。ご用の方はこちらにショートメールで御連絡下さい』
電話番号が書いてある。
「わぁ、トラブルの電話番号ゲットだね、テオ」
ノエルは良かったねと、テオを
「嫌だ……こんなの嫌だ!」
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