第70話 カン・ジフン再び
「お前、本当に社員になったんだなぁ」
ソンの大声で集まって来たスタッフに、背中を叩かれながら歓迎を受ける。
「バイクの調子はどうだ?」
以前、メンテナンスをしてくれたスタッフに、お願いしますと、バイクの鍵を差し出す。
「ハハハー、昼に見ておくよ」
「ヒマな時は、手伝いに来てくれよー」
ソンの言葉にペコッと頭を下げる。
次にメイク室へ向かった。
ユミちゃんもソヨンもいない。今日はメンバー達がオフなので2人も休みのようだ。
1年前に修理した壁(第1章第7・8話参照)は、問題ない様だった。
続いて、事務所に顔を出す。
稟議書と社員名簿を請求した。
「医務室は治外法権なので稟議書はいらないですよ。何でもイ・ヘギョンさんの言う通りにしろと、代表に言われているので」
年配の事務員は言う。
何でも? と、メモで聞き返す。
「はい、何でも」
彼女の性格では新しい血圧計を買ってとは言いにくかったのだろうなーと、納得をする。
稟議書数枚と社員名簿のコピーをもらい、医務室に戻った。
医務室ではイ・ヘギョンが私物をまとめていた。
「もう少し、ジウちゃんとお仕事したかったけどー、今日までなのよねー」
鍵を差し出してトラブルに渡した。
「春節まで休むつもりなのー。大学に遊びに来てちょうだいねー。分からない事があったらメールしてねー。まあ、ジウちゃんに分からない事なんてー、ないと思うけどねー」
間延びした褒め言葉に苦笑いをしながらイ・ヘギョンを見送る。そのあと、自分のノートパソコンをリュックから取り出して社員名簿の入力を始めた。
(氏名、性別、生年月日、所属……あ、ダメだ)
家に持ち帰るパソコンに個人情報は入れられない。トラブルは書類棚の大量の紙カルテを見上げ、ため息を
そして、ふと思いついた。
(待てよ。そもそも、なんでここにカルテが? どこかの病院か健診センターに委託していないのか?)
トラブルは比較的新しいカルテを手に取り、今度はしっかりと目を通す。
やはり、身長・体重・血圧などの基礎情報はイ・ヘギョンの字で書いてあるが、血液検査結果はコピーだった。
尿検査・レントゲン・心電図の結果は《異常なし》または《要再検査》としか書かれていない。
(委託先の名前はないな……)
仕方なくイ・ヘギョンにメールを送る。
返信を待つ間、他のカルテにも目を通した。
トラブルのスマホがラインの着信を伝えた。
読んで頬がゆるむ。すぐに返信をした。
『2階の医務室にいます』
返信後しばらくして、ドアがノックされた。
軽い足取りでドアを開けると、そこにはカン・ジフンが立っていた。
「久しぶり。あの……連絡をありがとう」
柔らかい笑顔で照れた顔を向ける。実に1年ぶりの再会だった。
トラブルはスマホのメモで、ピクニックランチに行きませんか?と、誘う。
「うん。今日は風もないし……というか、実は、そのつもりでシートも持って来てる」
カン・ジフンは頭をかきながら笑う。トラブルも微笑み返した。
一方、メンバー達の宿舎では……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます