第64話 白の写真
「なぜ、お前はあの場所に戻った」
トラブルの体に緊張が走る。
「なぜだ。待ち合わせ場所で男に絡まれた時、お前は1度はその場を離れ、逃げたんだろ? なのに、なぜ戻った? 自分勝手で女王様気質のお前は
トラブルは頭を
パクは今にも折れてしまいそうな、その細い首と悲痛に歪む美しい横顔を撮り続ける。
「彼1人なら逃げきれただろうに……悲劇のヒロインを気取るつもりが本当の悲劇を起こしてしまったのだろう⁈ 将来を
「やめて下さい!」
テオは涙を流しながらパクを見つめた。テオの腕はトラブルの冷たい涙を感じていた。
「他にもあるはずです。こんな……こんな方法じゃなくて、何か他にも違うやり方が……」
パーテーションの裏のセスは、頭を抱えて体を折り曲げ、辛そうに呼吸が早くなっていた。ノエルが背中をさする。
ジョンは耳を塞いで、ゼノの元へ戻ってしまっている。
ノエルは思う。
(パク先生はゴールをどこに持って行こうとしているのか……)
「太陽の子テオと影の子トラブル。なぜ君達は同じ顔をしている? 同じ顔を持ちながら、まったく違う人生を歩んで来た2人は、なぜ出会ったのか」
パクはゆっくりとした口調に戻した。そして、テオに語り掛ける。
「私はね、君がデビューした時、心底驚いたよ。精神病院から退院して私の部屋の隅で震えている人間がテレビで歌って踊っているのだからね。君の笑顔が毎日テレビで流れ、君の人気が上がれば上がるほど、汚いドブネズミのようなミン・ジウが哀れになってね……」
天を仰ぐ。そして信じていない神に失笑を投げた。
「なぜ、神は同じ容姿を与えた2人を光と影に分けたのだろうか……私はね、神に怒りを覚えたのだよ。これが2人の運命だというのなら、逆らわせてやろうと思った。そして待った。君達が、このパク・ユンホの被写体として世間が納得する程の人気と実力をつけることをね。そして、その日は来た」
柔らかい視線をテオに向ける。
「テオ、私にもっと時間があれば違うやり方をしていたよ。しかし、私には時間がない。時間がないんだ……」
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