第43話 テオの大失敗


 ランチ兼収録が終わり、次はパク・ユンホの写真撮影だ。


 ユミちゃんはゼノのメイクを直して髪を整える。ゼノは衣装を着ると、ますます背が高く見えた。


 トラブルがレフ板で、ウッドデッキに立つゼノの顔を照らす。


 パク・ユンホが「次は、座ろう」と、椅子を指差した。


 長い足を組みポーズを決める。真っ白い背景にシルバーの髪が映えた。


 パクのシャッター音が雪山に木霊こだまする。


 続いてノエルが呼ばれる。


 パク・ユンホは庭に降り、ノエルにウッドデッキから体を乗り出して下を見るように指示を出した。


 下から見上げるようにファインダーをのぞくと、青い空にノエルの白い肌とピンクの髪がよく似合っている。


 そうこうするうちに、日が傾いて来た。


 パクはテオを呼ぶ。


 庭の写真を1枚撮り、テオに見せた。そして、画面を指差し、ここに立ってくれと説明をする。


 テオは言われた通りに、庭に始めての足跡をつけながら進み、振り向いた。


 その間も、シャッターは切られ続ける。


 夕焼け空の下で、テオは自由に踊るようにゆっくりと動く。


 パクは手招きをした。


「こちらに、歩いて来てくれ。そう、ゆっくりだ。いいぞー」


 シャッター音は鳴り続ける。


 おかしな髪の色も美しい顔の上では芸術品だ。


 テオはカメラの前で立ち止まらず、パクの横を通り過ぎて衣装の白いマフラーを外しながらトラブルに近づく。


 テオは、ひょいっとトラブルの首にマフラーを掛けた。


「!」


 無表情だったトラブルは一瞬目を見開き、そして、マフラーを振り払って走り去ってしまった。


“どうも” “どういたしまして” を期待していたテオは、追う事も声を掛ける事も出来なかった。


 地面に落ちたマフラーを拾う。


「失敗だな、テオ」


 目を細めながらパクが言う。


「はい……大失敗です」





 真っ赤な色を濃くして、日が傾いた。


 ジョンの番だ。


「トラブル、バイクをここに持って来い」


 キム・ミンジュの指示でバイクを押して指定された場所に運ぶ。


 途中、タイヤが雪にはまり動かなくなった。


 押しても引いてもビクともしないバイクに四苦八苦していると、見ていたテオが手伝おうと手を伸ばして来た。


 トラブルは無言のままバイクを置いて離れてしまう。


 結局、照明スタッフがバイクを運んで撮影が開始された。


 強い照明を上からあて、薄っすらと雪をかぶるバイクとジョンの、今までにないドラマチックな写真が撮れた。





 仕上げは室内で集合写真を撮る。


 暖炉の前に集まり、セスも昨日の衣装を身に付けて集中して撮影にのぞんだ。


 撮影の合間にノエルが小声でテオに聞く。


「トラブルと何かあったの?」

「分からないよ……急に僕を避けるようになって。僕、何したんだろ。どうすればいいの……」





 小休憩の後、すぐにテレビ収録に移る。


 ゲームをして勝った順に夕食を食べられるが、フードコーディネーターが「あれ? 鶏肉がない」と、冷蔵庫を探っていた。


 メンバー達は目をそらして聞こえなかったフリをする。


 夜10時。無事に今日のスケジュールは終了した。


 お疲れ様でしたーと、部屋にさがるメンバー達。


 ゼノは、荷物を広げたからと、ジョンの部屋へ戻って行った。





 セスが肩の凝る衣装を脱ぎ捨てて部屋着に着替えていると、トラブルがノックして現れた。


 体温を測り、体調を聞く。


 薬を指示通り飲んでいると確認すると、出て行こうとした。


 セスは呼び止める。


「今夜はユミちゃん達の部屋で寝られるのか?」


 トラブルは無表情で目を合わせないまま、大丈夫ですと、手話をした。


「ふーん……テオと何があった?」


 大丈夫ですと、繰り返す。


 トラブルはペコッと頭を下げて部屋を出て行った。





 トラブルは薄暗い廊下を歩きながら頭を悩ませる。


(今夜はどこで寝よう…… )


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