第42話 雪山でセス復活


 トラブルは、パク・ユンホの部屋をノックした。


 ドアを開けたのはキム・ミンジュだった。


 ペコッと頭を下げて朝の挨拶を済ませ、パクの血圧と血糖値を確認してインスリンの指示を出す。


 セスは快方に向かっていると伝え、他のメンバー達も症状はないが、森の中は避けた方が良いと提案をした。


「そうだな。ウッドデッキか、せめて庭にしておくか」

「全体撮影はリビングの暖炉の前ならセスも大丈夫ですよね」


 キムの発言にパクは、そうだなと、同意した。


「トラブル、バイクを貸せ。ジョンとバイク。いいだろ?」

「そうですね、雪景色だけよりも変化が付きますね」


 トラブルの返事を待たず、バイクを使用する事が決まった。




 トラブルは乾いた洗濯物を取り出してセスの部屋に戻る。


 セスはまだ寝ていた。額に手をやるが熱はない。


 布団を肩まで掛けなおし、リュックを持って静かに部屋を出た。そして、追い出された別棟の部屋へ小走りに向かった。


 ノックをすると、ユミちゃん達は朝食を済ませて本棟へ向かう所だった。


 シャワーを使わせてほしいと頼む。


「もちろん」と、ユミちゃんはトラブルにハグをして出て行った。


 部屋は、昨夜の女子会がよほど盛り上がったのか散らかり放題だった。


 床に写真が数枚落ちている。トラブルはそれを拾った途端に鳥肌が立つ。


(私⁈ )


 トラブルは、そーっと、自分の隠し撮り写真を床に戻し、バスルームに入った。


(この部屋で寝なくて良かったー……)





 リビングでは、メンバー達で髪の染め合いをする様子を収録していた。


「セスは風邪を引いて寝てまーす」と、ジョンがファンに説明をする。


 本当は決まっているのだが、自分で好きな色を選んだように進行していく。


 ゼノはシルバー。ノエルはピンク。テオはグリーン。ジョンはオレンジ。


 テオの髪にスプレーをしている時、ジョンがいたずらを始めた。


 自分のオレンジスプレーをテオの頭にひと吹き。


「何をした〜」と、テオはにらみ付ける。


「あれ、以外にイイよ」


 ノエルがいたずらに加担した。


 結局、テオの髪は半分がグリーン、半分がオレンジに染まった。





 賑やかな収録を横目に、トラブルはセスの部屋に行く。


 セスはまだ寝ている。


 トラブルはソファーに横になった。目を瞑り、睡魔に吸い込まれる感覚に陥っていると、誰かの気配を感じた。


(近い…… 誰だっ!)


 トラブルがつかんだのはセスの手首だった。


 目を見開いて驚くセスの顔が近い。


 体を起こしたトラブルは、掛けられているタオルケットに気が付いた。


「悪い。起こすつもりはなかった」


 いえ、大丈夫ですと、顔の前で手を振る。


 体調は?と、手話でセスに聞いた。


「かなり、スッキリした」


 リビングから、賑やかな声が聞こえてくる。


「収録中か。俺も行っていいのか?」


体調が良いなら。ただし、マスクをして下さい。


「ノーメイクだから、丁度いい」


 セスは着替えて部屋を出て行った。





「おー!セス!」

「セスー!」


 リビングからセスコールが聞こえてくる。


「テオ、なんだ、その頭」

「ブルーに言われたくありません」


 笑い声が弾けている。


 今日はランチを作り、食べるところまで収録する予定だ。


 トラブルはセスが掛けてくれたタオルケットを肩まで引き上げ、寝返りを打って、もう、ひと眠りした。

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