第36話 週刊誌


 記憶が残らないくらい忙しい師走しわすが瞬く間に終わり、新しい年を迎えた。


 初出勤したメンバー達のもとへ、マネージャーが血相を変えて走って来る。


 新年の挨拶もそこそこに、写真週刊誌を広げて見せた。


《お持ち帰り⁈ 》


 タイトルを見ただけで、今度は誰の熱愛報道だ?と、メンバー達はうんざりと読み進める。


 しかし、添えられた写真を見た途端、全員の顔色が変わった。


 歌謡祭の会場入りをするテオの帽子とノエルの眼鏡に丸印がされ、会場から出るトラブルの帽子と眼鏡にも丸印がされている。


『テオの帽子とノエルの眼鏡で変装させたモデルをメンバー全員でお持ち帰りか⁈ 』


「なんで、こうなるの⁈ 」


 変装させたテオが動揺する。


「バカかっ! 全員で持ち帰るか!」


 セスが悪態をいた。


「お持ち帰りってなに?」


 最年少のジョンの質問に「自分で調べて下さい」と、ゼノはスマホを渡す。


 その時、バンッと乱暴にドアが開き、代表とユミちゃんが同時に入って来た。そして、同時にまくし立てる。


「これってトラブルでしょう⁉︎」

「何であいつが週刊誌に出てる⁉︎ 」

「これ、本当⁉︎ 」

「本当であってたまるか!」

「誰か説明してー!」

「しろー!」


 まあ、まあ、と落ち着かせ、ゼノが事の成り行きを説明した。


「クソッ。トラブル女め……」   


 代表はマスコミ対策を考え始める。


 セスがスマホを見ながら「大丈夫そうだ」と、言い、SNSをかいつまんで読み上げた。


「『歌謡祭の後メンバーの車をけました。メンバーはそのまま会社へ戻りました。同乗の女はすぐに会社を出て地下鉄でどこかへ消えました。週刊誌はデマでした』な? ファンが俺達の潔白を証明してくれた」


 代表は大きくため息をいた。


「今回は結果的に良かったとしても、次もそうだとは限らない。ったく、気を付けてくれよ」

「トラブルはどこにいるの?」


 ユミちゃんの中にはトラブルしかいない。


「パク先生に当分の間、来ないように頼んだ」

「えー! ひど〜い。辛いわ〜」


 ノエルは歌謡祭の会場で面白い事があったんだよと、思い出し笑いをした。


「トラブル、ユミちゃんみたいな女の子に囲まれて固まってたよ」

「何人いたっけ?」

「9人だよ、9人組み」

「ちょっとー! 私のトラブルに手を出したら承知しないわよー!」

「ユミちゃん怖いよ……」

「こういう時に直接本人に連絡が取れないのは困りますね」


 リーダーのゼノは腕を組む。


「そうよー、今何してるの?とか、メールしたい!」

「いえ、そういう意味ではなく……」

「お前らが関わらなければいいだけの話だ」


 代表は相手にしない。


「代表も知らないのですね?」


 ゼノが聞いても代表は答えなかった。


 セスがつぶやいた。


「知っているのは、パク先生とイ・ヘギョンさんだけか……」


「テオ、聞いてみてよ」と、ノエルは明るく言う。


「セスの方が教えてくれる気がする」


 テオの返事を代表は聞き逃さなかった。


「どういう意味だ」

「私が聞いてみる! 今度はしつこく聞いてみよー!」


 ユミちゃんは元気に部屋を出て行った。


「で? セスなら教えてくれるとは?」


 代表は決して聞き流さない。


 ゼノが先日のフラッシュバックの件を話した。


「そうか……」


 そう言ったまま、しばらく黙り込む。


「セス、悪かったな。対処方法を教えたのは俺で、パク先生に仕事を依頼したのも俺なんだが……」


 代表は続ける。


「こんなにも、お前らとあいつが近くなるとは想定していなかった。トラブルはお前らを気に入ったらしいな。理由は分からんが……トラブルの変化の理由は何だ? パク・ユンホは何を考えている?」


 後半は代表の独り言だ。


 そして、メンバー達を見回した。


「トラブルがトラブルを呼ぶのは分かっただろ? 関わり過ぎると面倒な事になる。トラブルの事は、ユミちゃんかカン・ジフンに任せるんだ」


 ひと呼吸置いた。


「お前達は関わるな」


 吐き捨てる様にそう言い、入って来た時と同じくバンッとドアを乱暴に閉めて出て行った。

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