7月8日

最近杉本君が来ない。

そんなことを考えていると、新しい中継ぎ人が訪れてきた。

彼に杉本君はどうしたのかと尋ねれば、連絡が取れなくなってしまい、新しく私の担当になったので挨拶に来たと言う。

そういえば、つい先日も私が眠っている間に慌てて帰ってしまったようであるし、一体彼はどうしてしまったのだろう。

私も娘も、好青年な杉本君を気に入っていたのでとても残念だ。

新しい中継ぎ人は冴島と名乗った。

玄関先で話し込んでしまったことに気付き、家の中へと促したが冴島君は私の後ろへ視線をやって引きつった表情になると逃げるように帰ってしまった。

一体なんだというのだ。

折角妻が茶菓子を用意してくれたというのに。


私は幸せものだ。

美しい妻と愛らしい娘に囲まれてこんなにも幸せな日々を送っている。

仕事も順調だ。

ただ一つ不満なのが、先日作り上げ納品した人形の持ち主が次々と変わっているということだった。

その子を手元に置くと不幸な出来事に見舞われるので手放す主が多いのだという。

人形が不幸を呼ぶ???そんなことあるわけがない。

ただの偶然に決まっている。

中には人形が歩いたり喋ったりなどという話も聞くがそんなものただの作り話だ。

人形は人形だ。

まったくもって馬鹿馬鹿しい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る