6月19日
大変なことになった。
昨夜作り上げた人形が無くなっているのだ。
昨日飲んだ薬のせいか、ぐっすりと寝て起きてみたら座らせておいたはずの場所からなくなっていた。
家中をくまなく探してみたがどこにもない。
一体どこに行ったというのだ。
まさか泥棒か……?
いや、しかし扉は全て閉まって鍵がかかっていた。
泥棒だとしても一体どこから入ってどこから出て行ったというのだ。
本当に狐につままれた気分だ。
まあ無くなってしまったものは仕方がない。私もこの子も無事だったのだからそれで良い。
人形はまた作ればいいのだ。
今朝……いや、昼は私が寝坊したばかりに腹を空かせてしまっていたのだろう。
胸元にかかる重みで目が覚めると「おとうたんおねぼうたんね」と笑われてしまった。
遅すぎる朝食(もう昼食だろうか)を摂って、退屈していた様子のこの子と遊んでいると仕事の中継ぎ人である杉本君が訪れた。
私の顔を見るなり挨拶もそこそこに『新作ですか?』と尋ねてくる彼に「何がだい?」と返すと、彼は私と抱き上げていたこの子の顔を交互に見て非常に気まずそうな表情をした。
『すみません』と謝罪する彼に何を言っているんだと笑いながらこの子を下ろし、井戸には絶対に近づいてはいけないよと注意だけして仕事の話に移った。
そんな様子を見守っていた彼はぎょっとした顔をして、始終おかしな表情をしていた。
一体どうしたというのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます