6月6日
制作中の人形だが自分でも驚くほどに作業が進んでいる。
丸みを帯びた輪郭や手足の造形は特に念入りに修正を重ね、髪の素材や眼球としてはめ込む予定の硝子の瞳も拘り抜いたものを用意した。
早く完成させたいと気持ちは逸る(はやる)が、丁寧に仕上げなければ。
だってこれは私の大事な娘なのだから。
愛しい愛しい私の娘……早くお前が目を開いておとうたんと私を呼ぶ姿が見たい。
……いや、私は一体何を考えているのだ。これは人形にすぎないというのに。
人形作りに没頭しすぎてて少し頭が混乱しているようだ。
いくらそっくりに作ったとしても娘ではない。そう、娘では。
そう言えば最近不思議な現象が起きている。
開けた覚えのない窓や扉が勝手に開いていたり、私一人しかいないこの家で誰かの歩く足音がしたりする。
始めは気のせいかと思ったが気のせいではないようだ。
私以外の誰かがこの家にいるとでもいうのか。
だが不思議と恐怖心は沸いてこない。
私はこの広い家に一人ではないとどこかでそう安堵しているのかもしれない。
寂しいのだろうな私は……
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