4月15日

娘を失ってからもう一週間が過ぎた。

しかし私の時は止まったまま……

食事は喉を通らず無気力で、特に何をするでもなく朝起きて庭をぼんやりと眺め、夜になるといつの間にか眠っている。

ただ生きているだけ。今の私はまるで人形のようだ。


人形……そうだ、人形を作らなければならない。私は人形師なのだから。

依頼のあった人形を作って納品する。それが私の仕事だ。

今受けている依頼の納品日は迫っているが、私の事情を先方も知っているのだろう。ゆっくりで良いと言ってくれた。

だがずっとその言葉に甘えるわけにもいかない。人形を作らなければ。

妻と娘が大好きだと言ってくれた私の人形。

妻を失った時は娘が傷を癒してくれた。

娘を失った今は人形が私を癒してくれるだろうか……?


こんなことを書いてはいるが未だに私は娘が死んでしまったことを信じられない。いや、信じたくないのかもしれない。

何故なら時折娘の存在を感じてしまうのだ。娘に呼ばれた気がして振り返ってしまうこともある。


そんなことなどあるはずもないというのに。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る