第16話美悪魔は寝込みを襲いたい
家に帰ってくると、如月さんは率先して家事を行ってくれる。今日一日歩き回って疲れているはずなのに……。
ありがたい気持ちと申し訳ない気持ちが俺の中で交差する。
俺は彼女のことを助けると言った手前、何もできていないのに。
彼女にばかりやらせているのは悪い。だから如月さんを手伝おうと思って彼女のもとに駆け寄る。
「何か手伝うよ?」
「いえ、今日一日私が連れまわしちゃいましたし、ゆっくり休んでてください」
「でも、その俺だけ何かしてないのは申し訳ないし……」
すると如月さんは呆れたようにため息をついて俺のことを見据える。
「りんくん?私はここにいるだけで幸せですから」
俺がかけて欲しい言葉を知っていたかのように如月さんは声をかけてくれる。
でもこんな彼女だからこそ一刻でも早く何かしてあげたいと思ってしまう。
そんな俺の心情に気が付いたのか如月さんは笑って「りんくん。相談があるんですけど⋯⋯」と聞いてくる。
「何でも言って?」
「それでは遠慮なく……。今日一緒にお風呂に入りましょう!」
「却下」
すると如月さんは不機嫌さを前面に出すように頬を膨らませてくる。
いや、むしろなぜいいと思ったんだろうか。
「まあ、それは冗談で。その、今度花火大会があるのでそれに一緒に行きたいなんんて?」
「花火大会?いいよ。一緒に行こう!」
「ほんと!やった~約束だからね?」
「わかったよ。絶対に連れていくからね」
そうして彼女のお願いを請け負った俺だが、それだけで手伝わせているのはやはり申し訳なくて、俺は結局家事を手伝ってしまうのだった。
◇◆◇
数日経って花火大会当日の朝を迎える。
しかも今日も今日とて俺たちは一緒の布団で隣で寝ているのだ。
なんだかんだ言って一週間近く同じ布団で寝ているのだが、どうも慣れない。
むしろこの環境に慣れる方が難しいというものなのだ。
ここ最近、毎日寝不足である。
そして隣で寝ているこの美悪魔様はまだすやすやと眠っているのだ。
くそ。羨ましい。
というか俺が起きてしまう原因が、如月さんが抱き着き魔すぎるせいで体勢が変えられず気になって起きてしまうのだ。
毎日、どうせ起きているんだろうと思って話しかけたりしてみるのだが反応は全くない。
本当に自然由来の小悪魔が出来上がってしまった。
いつか絶対にやり返してやるとは思いつつも、俺にはそんな勇気は微塵もなく、未遂で終わってしまうのだろう。
……もう一回寝よ。
俺は如月さんの顔を前にして寝るという豪胆さをいつの間にか身に着けていた。
「り……くん。お……てく……さい」
ん?なんか声がする……けどまだ眠いし起きなくていいか。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――皐月side
なんか起きたら、りんくんと抱き合っていました!!???
本当に突然のことで全く頭が回りません。どうして私たちは抱き合っているんでしょうか!?
位置関係を見れば完全に私が抱き着いた形のようですけど、りんくんも抱き着いているってことはその……
――私が狼さんになっちゃってもいいってことですかね?
と、思ったんですが、普通に抱き着かれてしまっているので抜け出すことはできませんでした……。
しいてできることと言えば、キスくらいしかできません。
でもりんくんの唇を奪ってしまっていいものでしょうか。なんだか病みつきになってしまう気がします。
その一回りんくんと交わった時にキスをしたことがありますが、こんなりんくんのことが愛してやまない状況でキスなんてしてしまったら私は壊れてしまう気しかしません……。
でも、キス……したいです。
私は自分を止めることができず、りんくんのほっぺに思い切って唇をつけてしまいました。
なんか、りんくんは私の物だとマーキングしているような気分です。
もう、りんくんを貪りたいです。
でも、それはなるべくしてなる関係になってからです。我慢しないとだめですよね……。
このままりんくんに抱き着かれっぱなしだと、もう私の中の狼さんが目覚めてしまいます。そのまえにりんくんを起こすことにしましょう。
「りんくん。起きてください」
するとりんくんの瞼が一瞬揺れました。なんとか起きてくれそうですね。
……………。
なかなか起きてくれません。
もう一度声をかけてみましょう。
「りんく~ん。起きてくださーい。朝ですよ~?」
「んんぅ。あと……三十分……」
五分じゃなくて三十分なことにりんくんの貪欲さを感じます。
寝ることに飢えているみたいです。私が最近毎日抱き着いてしまっているからでしょうか?
恥ずかしい話ですが、私は小さいころから枕を頭の下に敷いて寝るのではなく、なぜか抱いて寝てしまっているせいで、何かに抱き着いていないと寝れなくなってしまったんですが、最近はその何かがりんくんになってしまって……。
しかもりんくんを抱いて寝るのが、何と言えばいいのか分からないのですが、良いのです。そう、とってもいいんです。
男の子の少し筋肉質な体や、匂いがもう私好み過ぎて……。
もうりんくんなしの夜なんて考えられません。
それほどまでに私の身体にはりんくんという存在が植え付けられてしまいました。
もう、責任取ってくださいね?
「りんくん、起きてください~起きないとキスしちゃいますよ~」
そんなことを口にすると、りんくんは一瞬でベッドから体を起こしてしまいました。
そんなに私にキスされるのが嫌なのでしょうか。
私拗ねちゃいますよ……。
これは、りんくんへのいたずら増量確定ですね?
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