第11話お互いの身体は神秘のよう
なんとかプールまでつくことができた……。
電車の中もそうだったが、バスの中も相当な狭さで若干酔ってしまった。
「りんたん、大丈夫?水のむ……?」
「うん。ありがとう……いただきます」
そして俺はペットボトルの口を開け、そのまま口をつけた。
まだ冷たさを持った水がのどに一気に流れ込んでくるようで、俺の身体の不快感をかなり除いていってくれた。
「ありがとう。なんだか生き返るような気分だよ」
和泉さんは「ならよかった」とニコッと笑う。
「私もなんだかのどが渇いてきちゃったなぁ」
和泉さんはそう言って俺が先ほど口をつけたペットボトルに躊躇なく口をつけた。
「……?こっち見てどうしたの?」
か、間接キス……。俺がそんなことを言えるはずもなく、和泉さんは俺の視線が向いている方向を見て、何かに気が付いたように、ペットボトルを渡してきた。
「りんたんののどが渇いた時に飲んでね!わ、私はちょっとトイレ行ってくるから待ってて!!」
和泉さんはまくしたてるような早口で俺の前から脱兎のごとく消えていった。
どうすればいいんだよ……。この飲み物……。
「お待たせ!」
「ううん。平気だよ。それじゃあ行こうか?」
「うん!」
俺たちは入口で入場料を払って、更衣室に入っていく。
男の更衣室というのはやけに湿気がこもっていて正直不快感を覚える。
まあ、プールというところに来ているなら仕方ないものなのではあるのだが、それでも長い時間居たいと思えるものではなかった。
そんなところからすぐに出ようと思って上に来ていたTシャツを脱ぐとだんだんと自分に自信がなくなってきた。
「こんな体で大丈夫かなぁ……」
周りを見ると、腹筋がバキバキに割れている人や筋肉が盛り上がってまでいる人もいた。それに比べ自分は、別に太っているわけではないけど、単純に痩せすぎている気がする……。腹筋は一応割れてはいるけど、これは中学の部活の賜物だしなぁ……。
まあ、太っているよりはいいと思うことにして、必要な荷物を持って更衣室を出た。
男子更衣室を出て、和泉さんがすぐに出てきてすぐ気づけるであろう場所に立っていると、やけに女子更衣室の周りをウロチョロとしている数人の男たちがいた。
ナンパっているんだな……。まあ、俺が関わることになるなんて一生ないだろうけど。
すると和泉さんが、女子更衣室から出てきたから迎えに行こうとすると俺の前に数人の男が入ってきて、和泉さんに話しかけた。
「ねぇ?いま一人?俺たちと一緒に行かない?」
あの、真後ろにいるんですけど……。
絶対かかわることになんてならないと思ってたんだけどなぁ。
「和泉さん、こっちだよ~」
「あっ!りんたん!今行くね!」
和泉さんは数人の男を尻目に、俺の方に駆け寄ってきた。
実際手を出す奴なんていないしなぁ……。こんな人の目のつくところでやったらすぐに警察行きだし。
それでも怖いものは怖い。今でも足ががくがくと震えてる気がする……。
「ありがとう!ちょっと怖かった」
「ううん。大丈夫だよ」
全然大丈夫じゃないです。めっちゃ怖かったです。何なら今もまだ怖いです……。
「それで、りんたん?何かないの?」
和泉さんは笑顔を浮かべているのだが何のことだろうか……?さっぱりわからない。
俺が困っていると、和泉さんの表情はだんだんと曇っていき、やがてしびれを切らしたように、叫んだ。
「もーっ!水着のことだよ!!私これでも勇気出してこれ買ったんだからね!!」
和泉さんはセパレートタイプの水着を着ていた。パステルカラーのフリルのついた……。
今の高校生ってこんなの着るの!?
「に、似合ってる!!かわいいと思うよ!」
「むーっ。嬉しいからいいけど……次はちゃんと気が付いてよね!」
まだ次があるのか……。褒めるのってこっちも恥ずかしいんだよ……。
「そのりんたんも意外と男の子っぽい身体してるんだね……」
そう言いながら和泉さんは俺のお腹にチョンと指でつつくように触れた。
「ふぇっ!?ちょ……。和泉さん……」
意外と和泉さんの指が冷たくて驚いてしまった。
それで情けない声も出てしまったし……。
俺がそんな声を出していても、和泉さんは俺の腹筋に沿って指を這わせている。
「あの……?和泉さん……?」
「あっ!うん!なに!?」
「いつまで触ってるの……?」
「なんか病みつきになっちゃって」
和泉さんはえへへと笑いながら、まだゆっくりと俺の腹に指を這わせている。
「場所取ったら好きなだけ触っていいから、行こ?ていうかさっきから人の目があって恥ずかしい」
といいながら大きくため息を一つついた。
「ほんと!?なら早く場所を取ろうよ!」
そして彼女ははしゃいだ様子で駆け出して行ってしまった。
そんな触りたくなるもんなのかなぁ……。正直全然気持ちがわからない。
「りんた~ん!はやく~!」
そんなに楽しみなのかと思って、俺は笑いながら彼女の方へ向かった。
「いいの?本当に好きにしていいの?」
「いいよ、さっき言っちゃったからね」
「ありがと!!」
そして彼女はおそるおそる俺のお腹に触り始めた。
「ふわぁ……!」
和泉さんは恍惚とした表情を浮かべながら、お腹の割れ目に指を添わせたりしている。一体いつまで続くのだろうか……。
結局十分以上、和泉さんは俺のお腹に夢中であった。すると満足したように顔を上げ「また触らしてくれないかなぁ……?」と小さい彼女特有の上目遣いでねだってくる。
こんなの断れるわけがない……。
「うん……。機会があったらいいよ」
その返答を聞いて「やった!」と無邪気に喜ぶ彼女を見ていると、これはこれでよかったんじゃないかと思える。
すると和泉さんは更衣室から持ってきてたバッグの中から日焼け止めを取り出した。
「和泉さん……?確かここって日焼け止め禁止じゃ……?」
すると和泉さんは俺の口元に指を立てて「秘密だよ」と小さく囁いた。
そして日焼け止めを塗り始めたのはいいが、少しして和泉さんの手が止まった。
「あの……りんたん。後ろの方塗ってくれない?」
「……俺が?」
「むしろりんたん意外に誰かいる?」
同級生の女の子の肌だってほとんど触ったことないのにいきなり素肌に触ることになるなんてハードルが高すぎないか……?
「わかった。やる……うん」
日焼け止めを受け取って、白く濁った液を自分の手の上に落とす。
「それじゃあ、塗るね?」
そして俺は白く小さい、肌に手を付けた。
「ひゃっ!?」
「ご、ごめん!」
「大丈夫だよ。ちょっと冷たくてびっくりしちゃっただけだから」
びっくりした……。確かに彼女の声にもびっくりしたんだけど、思ったよりも彼女の体が柔らかすぎて……。これは自分の理性を抑えるのが大変だなぁ……。
なんというか、今日一日で和泉さんに陥落してしまいそうだ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます