第9話予定外の電話
短めです。ごめんなさい……。
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夏休みに入って、早くも二週間と少しが経ってしまった。
俺はというと、起きて、ご飯を食べて、暇になったらゲームか宿題をする毎日だ。
退屈ということ限りない。
こんな毎日を続けていると、だんだんと日付や曜日感覚がなくなっていって、今が何曜日の何日かさえ把握できていない惨状なのだ。
そんな状態に陥った時はスマホのカレンダーを見て、真っ白なカレンダーの中に唯一予定が書いてあるところを見て、ついつい頬を緩めてしまうのだ。
――8月6日。プール
◇◆◇
終業式の日の夜。俺は本当に和泉さんから連絡が来るのかと疑心暗鬼になりながらもその日だけは、家の中でも常に携帯を持ち続けるようにしていた。
とにかく早く返信するということだけは意識していたのだが、俺のもとに来た連絡方法はメッセージではなく、通話だった。
彼女が部活仲間と取ったであろう写真が、画面いっぱいに表示される。
その画面を見て、俺は動きを止めてしまった。
通話?てっきり俺は普通にメッセージで連絡を取り合って予定を立てるものだとばかり思っていたんだけど……。
ワンコールでとることもできた電話を俺は少しだけ間を開けて、覚悟を決めてから電話に出た。
『もしもし?りんたん。今大丈夫?』
「うん。平気だよ。プールのことだよね?」
『そうそう!少し遠出することになるんだけどそれでもいい?』
「……具体的にどのくらい?」
『都内のプール行こうかな~って思ってるんだけど平気かな?』
都内か……。まあそれくらいなら大したことないだろう。
ちなみに俺や和泉さんが住んでいるのは東京の隣県だから、さほど都内に行くというのも難しくないのだが、交通の仕方が面倒で、東京に入るまでにも何本か乗り換える必要があるのだ。
だから隣県でも少し東京を遠く感じてしまう。
それゆえに気軽に東京に行こうとは言わないのだ。
「大丈夫だよ~」
『それじゃあそれじゃあ、東京でプールに入った後にショッピングに行って、それからよるご飯を食べに行こうね!それからそれから』
……なんか多くない?俺はてっきり、プールに行ってそれで帰ってきて終わりだと思ってたんだけど……?
『それで……ってりんたん?聞いてる?』
「あ、うん。聞いてるよ」
『むーっ……!絶対聞いてなかったでしょ』
「ごめんごめん。で、何の話だったっけ?」
『ほらー!やっぱ聞いてないんじゃん!もう……いつにするかって話だよ。それでりんたんはいけない日とかはある?』
「ないよ~。和泉さんの予定にあわせられると思う!」
『それなら8月6日とかどうかな?』
「空いてるよ!じゃあ、その日で決定で大丈夫だかな?」
俺は空いていない日をすべて把握できるくらいに予定が少ないので即答でそう返した。
『そうだね!ほかにもいろいろ何するかとか決めたいんだけど、りんたんは東京で何かしたいとかある?』
「俺?特にないかなぁ……」
『それなら私が決めちゃってもいいかな!?』
「うん、いいけど」
『本当!?なら私が決めておくね!それじゃあばいばい!時間取っちゃってごめんね!』
「あ、うん。ばいばい。またね」
そして通話を切ると、少しだけ早くなった鼓動を感じる。これは通話によるドキドキとした感情なのか、それとも和泉さんがいったいどれほどの予定をあの一日に詰め込む気なのだろうかという、緊張感からか。
おそらくは前者だろう。
生まれてこの方、同年代の女の子と通話したことなんてなかった。
耳もとでしゃべられてるようなあの感覚、癖になりそうだ……。
いったいどうなってしまうんだろう……。
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