第6話 おてつだいの悲劇

「み、見習いのサスファですっ。よろしくお願いしますっ!」


 言って、ぺこりと頭を下げたのはサスファという女の子でした。ピンクの長い髪を二つに分けて結っています。

 フォルトとルフィニアは必死な彼女を見て、ヒソヒソと言葉を交わしました。


「大丈夫か?」

「多分」

「なんかドジそうだぞ?」

「うっ」

「不安」


 そんな時、フォルトの後ろに隠れていたイリスがひょっこりと顔を覗かせました。サスファがはっとして、笑顔になります。


「あっ、あなたがイリス様ですね!? きゃあ、可愛い!」


 と、一人盛り上がり、くるりと背を向けてイリスに髪を見せながら言います。


「どちらでも、お好きな方を引いてくださいね」

『ええ!? まさか、ファン!?』


 フォルトもルフィニアも、その予想外のリアクションには驚くばかりです。


「イリス様にお仕えすることが出来るなんて、幸せですっ!」


 早速、ぎゅーっと髪を握られている様子に、二人は思いました。


『あぁ、また新たな犠牲者オモチャが……』



「あふ……」


 そんなサスファの見習い修行が始まって数日後。フォルトは休憩室であくびをしているサスファを見つけました。


「わわっ、スミマセン」


 慌てて立ち上がるサスファに、フォルトは「ん、あぁ良いって」と声をかけます。


「眠いんだろ?」

「う……」

「ここの仕事は夜中心だからな。慣れるまでが大変なんだ」


 サスファは窓から見える明るい景色を見ながらいいました。


「あの、空も作り物なんですよね」

「あぁ。まぁそのうち誰でも慣れるさ」

「はい。頑張ります! イリス様のために、ファイト・オーッ!」


 サスファは一人、気合いを入れてから、「ところで」と続けます。


「完全に夜型の人間と吸血鬼って、どう違うんでしょうね?」


 その一言はフォルトの胸にどすっと突き刺さりました。それは言わないお約束というやつですね。



〈おしまい〉

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