第4話 リードかいぎ

「あー、頭痛い……」


 ある日、フォルトは従者塔の食堂で、ズキズキする頭を抱えてぼやいていました。

 頭痛は、イリスに髪を引っ張られ過ぎるのが原因のようです。


「もう、根性ないなぁ」


 すると、同僚のルフィニアが温かいお茶を出してくれながら、そう言いました。


「このままじゃ本当にハゲる!」


 フォルトはくわっと目を見開いて訴えます。


「キャーッていう、毛根の悲鳴が聞こえるんだって!」

「意味不明。引っ張られるのは皆同じでしょ?」


 ルフィニアの言葉を、フォルトは「いいや違う!」と強く否定します。


「そっちはリボンじゃないか!」


 言って、ルフィニアの髪に巻き付けられたピンク色のリボンを指さしました。

 そう、髪を伸ばすのが嫌な従者は、代わりにリボンの先を長~く垂らしておけば良いのです。

 ルフィニアは呆れました。


「なら、あなたもリボンでも付けたら? 予備ならあるわよ」


 わざわざ懐から緑のリボンを差し出してくれます。

 しかし、フォルトはその親切な申し出をきっぱりと断りました。


「それは嫌」

「オマエは駄々っ子か」



 そんなことがあった数日後。フォルトがイリスの部屋で掃除をしていると、


「ねぇねぇ」


 と部屋の主が声をかけてきました。なんでしょうか。


「だだっこー!」


 どさどさっ! 突然の発言に、フォルトは抱えていた掃除道具や書物などを全部床に落としてしまいました。


密告チクったな……?」


 ルフィニアが「イリス様、ナイス!」と喜んでいる様子が目に浮かぶようです。


「ねー、『だだっこ』ってなぁに?」

「……」


 説明するべきか、しないべきか、世話係は大いに悩み始めるのでした。

 ……ワガママなのは職場でしょうか、自分でしょうか?



〈つづく?〉

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