第3話 ごしゅじんは成長中

 ※血の描写があります。苦手な方はご注意ください。



 イリスのお腹がぐぅと鳴りました。「食事」の時間の合図です。

 フォルトを見てみると、ちょうどしゃがみこんで、何かの作業をしているところでした。


「おかなすいたー」


 と言って、その大きな背中にどさっと身を預けます。


「お、重いんですけど……」


 イリスはまだ5歳ではありますが、急に乗りかかられて、よじよじと登られればそれなりに重みを感じます。

 けれどもイリスは、そんな文句はちっとも聞いていないようです。


「ねーねー、はやくー」


 フォルトは、仕方なく従者服のえりを引っ張り、すっと首筋を出してやりました。


「わーい、いただきまーす!」


 小さな吸血鬼は元気いっぱいに牙を立てます。

 ぷつり、と皮膚が裂ける音がして、そこから流れ出る血を飲み始めました。

 いつもならすぐに終わります。でも、この日はちょっと違いました。


「あ、あの、まだですか?」


 問いかけても返事はありません。


「そろそろ、良いんじゃあ……?」


 まだのようです。


「ね、ねぇ。もしもーし?」


 そろそろ終わってくれないと、まずいことになりそうです。


「う、なんか、クラクラ……」


 フォルトは血を急速に失い過ぎて、昏倒してしまいました。


「う?」


 このお仕事では良くあるトラブルなのでした。



〈おしまい〉

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